第37話 レヴィン、帰宅する

 ベネディクトたち、第一班のメンバー九名から遅れること数時間で、レヴィンはメルディナへと戻った。

 そしてレヴィンは、他の生徒たちと共に王都ヴィエナへと帰還を果たしていた。


 結局、願いは叶わぬまま、あの天界の会議室から元の世界へ戻ることとなったレヴィンは、サリオンに連れられてスネイトと激闘を繰り広げた場所へと転移した。

 サリオンによれば、この森林は魔の森の中だと言うことであった。

 レヴィンはかなり物騒な場所で戦っていたのである。

 帰るのが面倒だなと考えていたレヴィンの心の内を読んだのか、サリオンはメルディナまでレヴィンを送ってくれた。

 サリオンにお礼をして別れを告げたレヴィンは、メルディナの衛兵に名乗り出て事情を説明した。


 その後、レヴィンは警備隊に引き渡され、簡単に事情を聞かれた。

 スネイトにさらわれたが、何とか倒して逃げてきたと言うことにしておいた。

 そしてメルディナの駐在鑑定士に鑑定された後、宿で休んでいたベネディクトたちと再会することになった。

 ベネディクトたちはレヴィンの無事を喜んでくれたようだ。

 そこで警備隊と同様に、どうやって逃げてきたかと聞かれたので同じことを答えておいた。幸運が重なった上での勝利であったが、事実なのだから問題はないだろうとレヴィンは思っている。


 その翌日、大きな馬車二台に分乗し、メルディナを出発。

 特に急ぐ様子もなく、馬車に揺られること二日半程で王都ヴィエナに到着した。

 到着した時には、城壁の南門付近には家族とアリシアなどの関係者が首を揃えていた。早馬の先触れによる伝令を聞きつけたのだ。それに今日が休日なのも大きいだろう。それぞれが家族と無事を喜び合う中、レヴィンもグレンたちの元へと駆け寄った


「ただいま!」


 レヴィンがあまりに元気良く挨拶するものだからグレンたちもどこか拍子抜けさせられたようだ。


「ったく心配させやがって」


「レヴィン、どこも怪我していないのね?」


「おにいがこんな事件に巻き込まれるなんて神様に何かしたんじゃないの?」


 グレン、リリナ、リリスの言葉が優しくて身に染みるレヴィンであった。

 リリスの言葉はちょっと違うような気もするのだが。


「心配をかけてごめん。事件のことは追々説明するよ。後、リリス。俺が神に何かしたんじゃねぇ。神が俺にやらかしたんだ」


 リリスはその言葉を受けて困惑の表情を浮かべるが、レヴィンは気にしない。

 ベネッタはレヴィンの背中をバンバン叩きながら嬉しそうに笑みを浮かべている。


「しかし、こんな事件に巻き込まれても動じないなんて、本当にレヴィンは変わったねぇ!」


「いやーすみません。心配をおかけしまして……」


「兄ちゃん、流石は探求者だね! 僕も早く探求者になりたい!」


「フィル、俺のような探求者になるのだ」


 フィルの探求者になりたい病が今日も発動していたので、レヴィンは取り敢えず激励しておいた。レヴィンがもう一人のお元気天然娘の行方を捜していると遠くから声が聞こえてくる。


 アリシアである。


「良かった! 間に合ったよ~」


「どこ行ってたんだ?」


「シーンに知らせに行ってたの」


 レヴィンがアリシアの視線の方向へ目をやると、へばりながらこちらに走ってくるシーンの姿が目に映った。

 そのピンク色の髪が激しく揺れている。


「レヴィン無事で何よりだよッ! また事件のこと聞かせてねッ!」


「ありがと。まぁ箝口令かんこうれいが敷かれてるからな。ちょっとだけだぞ?」


 そこへようやくシーンが到着した。

 手を膝に置いてゼェゼェと荒い呼吸をしている。


「大丈夫か? シーンも体力面が問題だな。俺と一緒だ」


「無事で……良かった……」


 レヴィンの言葉にシーンは息を弾ませながら、滅多に見れない笑顔を見せる。

 顔が紅潮してしんどそうな彼女の頭をポンポンと叩きながらレヴィンは言い放つ。


「ありがとう。まだ最強にもなってないのに死ねないからな」


 その後、しばらくして解散となった。

 一応、天下の大通りで長々と再会を喜び合っている訳にもいかないのだ。

 しかもかなりの人数が集まっているのである。


 明日からは中学校生活と並行して、事情聴取も始まるらしい。

 レヴィンとしては少し気になることもあったが、確認の術がないので下手に動かないことに決めた。

 藪をつついたら何が出てくるかも分からないのだ。

 レヴィンは、これから始まる面倒臭そうな調査協力と言う名の取り調べのことを考えてため息をついた。

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