第35話 レヴィン、消滅する
いつまた勝手に
レヴィンは勝負を一気に決めるべく、【
そして、スネイトに向けて走り出した。
得物がわざわざ飛び込んできてくれるのだ。
スネイトは喜色に顔を歪めると、レヴィンに向けて光の鎖を三本解き放った。
鎖の動きは速いが見える。
レヴィンは戦えることを確信し、その鎖の一本をミスリルソードで払い斬り、残りの二本をかわす。その一撃に鎖の一本は破壊されたが、残りの二本はレヴィンを捕らえるべく軌道を変えて襲ってくる。
今の攻撃力が、通用することに歓喜の表情を見せるレヴィン。
スネイトが驚きの表情で固まっている隙を逃すことなくレヴィンはすかさず、魔法を発動させた。
【
「チッ」
炎の塊、と言うより灼熱の溶岩のような火炎弾がスネイトに迫る。
スネイトも流石に魔法を喰らうつもりはないようで、右手をかざすと光弾を放った。耳をつんざくほどの音が鳴り響く。火のついた花火を水につけた時に発せられるような、ジュッと言う音だが規模が違う。
スネイトがまたもや舌打ちをする。
火炎弾は吹き飛ばされることもなく、スネイトへと迫っていた。
その隙に鎖を破壊しつつ、スネイトの背後へと回り込んだレヴィンは斬り掛かる前にまたしても魔法陣を展開した。
【
指向性を持った雷がスネイトに直撃し、彼を中心に荒れ狂う。
「グウウウウウウウ」
スネイトの低い唸り声が上がったかと思うと、火炎弾に降り注いでいた光弾の雨が止む。
【
しかし、スネイトにかわす気配はない。
スネイトは目の前まで迫っていた火炎弾に光をまとわせた右ストレートをお見舞いする。するとたちまち、火の塊は砕け散り四散した。
自らの魔法に巻き込まれるのを避けるために足を止めていたレヴィンは、その力押しの回避方法に苦笑いを浮かべた。
だが、隙を逃すつもりもなかった。
【
レヴィンは
一瞬でスネイトの脇を駆け抜けたレヴィンが振り返る。
そこには
斬られた傷口からは流血ではなく、黒い塵のようなものが見える。
「異世界人風情がぁぁぁぁぁ!」
怒声を上げながら凄まじい速度でレヴィンとの間合いを詰めたスネイトは光り輝く右拳をその腹部に向けて放つ。
だがレヴィンには見えている。
半身になってそれを避ける。
そしてそのまま右手の剣をスネイトに振り下ろした。
しかし、手ごたえはない。
その剣はガッチリとスネイトの左手に受け止められていた。
力づくでレヴィンごと剣を持ち上げたスネイトは、それを地面に向けて振り下ろす。
レヴィンは地面に叩きつけられる前に剣から手を離し、空中で体勢を立て直すと器用に着地してみせた。
そしてすぐに反撃に移ろうとするが、その目の前に数えきれない程の光弾が飛んでくるのが分かると、慌てて後方に飛び退る。
しかし、次から次へと飛んでくる光弾に焦れたレヴィンは魔法陣を展開した。
【
五条の光が光の弾幕を打ち抜いて、スネイトへと迫る。
恐らく現時点でレヴィンが使用できる最高の攻撃力を誇る魔法だ。
しかし、スネイトとは距離が空いてしまった。
かわされては意味がないし、遠距離からの撃ち合いになったら時間が無駄に過ぎていくだけだろう。そう考えたレヴィンは、付与術による身体強化の魔法を自らに掛けると、光弾の飛んでくる方向へと走る。
こうなったら肉弾戦に持ち込んで、零距離から魔法をぶちかますだけだ。
光と土煙の中、一向に光弾が止まないところを見ると、【
あまりの光量に目が
レヴィンの目の前にはスネイトがいた。
レヴィンが更に加速しようとした瞬間、唐突な浮遊感に襲われる。
「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
落とし穴であった。しかも意外と深い。
迂闊であったとレヴィンは歯噛みして悔しがった。
取り敢えず、どこまで落下するのか分からなかったのでレヴィンは宙に浮かぶ魔法を使う。
【
ふわりと浮かび上がったレヴィンは、ゆっくりと穴の上へと昇り始めた。
この魔法は移動速度がとてつもなく遅いのだ。
外はサリオンが出した光球があるので、微かに脱出口の位置は見えるが、そこまで視界はよくない。
しかし、スネイトの攻勢は終わらなかった。
のろのろの上昇していたレヴィンの元へ何本もの鎖が伸びてきたかと思うと、その両手両足を
鎖の色が漆黒だったので、視認できなかったのだ。
それに機動力がほとんどない【
鎖に引き上げられ、まるで
完全に捕らえられてしまった状態のレヴィンを光が飲み込んだ。
「レヴィンさん! 今行きます!」
戦いをジッと静観していたサリオンが叫ぶ。
しかし、彼女を
「サリオン、来るなッ!」
レヴィンはダメージを負いボロボロになりながらも両手の鎖を破壊すると、足首に巻きついている鎖を壊しにかかる。
「どうしてそこまでッ!?」
「手を借りて倒したら願いが叶わないだろうがッ!」
レヴィンの目的は変わっていないようだとサリオンは脱力感に襲われる。
スネイトはそんなやり取りなどお構いなしに鎖を操ると、レヴィンを大地に叩きつける。凄まじいまでの衝撃がレヴィンを襲った。スネイトは執拗に何度も何度も、それを繰り返す。
繰り返される大地の攻撃は、流石のレヴィンにも大ダメージを与えた。
レヴィンはこの名前も知らない惑星に叩きつけられているのだ。
すなわち、この大地こそが凶器なのである。
レヴィンは何とか足の
【
白魔法レベル2の魔法で自らを回復したレヴィンに、光と闇がとぐろを巻いたような波動が迫る。大地を荒く削りながら。
着地の瞬間を狙った凄まじい速度の波動であったが、レヴィンはそれをギリギリのところでかわすと、すぐに魔法を放った。
【
風の刃がスネイトに向かって飛んでいく。
もちろんダメージを与えられるとは考えていない。
レヴィンは同じ魔法を連射しながらスネイトに接近する。
その全てを吹き散らされながらもスネイトの懐に入り込むことに成功したレヴィンは、魔力を纏わせた左拳で顔面を思い切り殴りつけた。
それを焦りの表情でかわしたスネイトも反撃に移る。
最早、二人は防御を無視した状態で殴り合っている。
「人間如きがぁぁぁぁ!」
「見下してんじゃねーよッ! その人間に頼らざるを得ない駄目神がッ!」
「お前らは所詮、少々使えるだけの道具なのだ。分を
「今まで何人さらった? 人間を使えるか使えないかで判断するんじゃねぇッ!」
【
超至近距離から放たれたレヴィンの魔法にスネイトの体に風穴が開く。
が、スネイトは
体を崩壊させながらも憤怒の形相で光の鎖を手から生み出す。
一瞬にしてレヴィンの体が束縛されるが、怒りを込めた最後の一発がスネイトの右頬を殴り飛ばす。レヴィンは拘束のせいで大地に倒れ伏した。
吹っ飛ばされたスネイトも鎖で体の自由を奪われたレヴィンも満身創痍な状態だ。
レヴィンは何とか手の
しかし、レヴィンの目に飛び込んで来たのは、両手に光と闇の混じった超巨大なエネルギーの塊をまとわせて迫り来るスネイトの姿だった。
ズガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンッ!!!!!
激しい爆音を轟かせ、土煙を爆風が吹き散らす。
腕で自分の目を守りながらも何とか爆心地に目を向けるサリオン。
「レヴィンさんッ!」
しかし、未だ収まらぬ土煙の中でサリオンは状況が把握できない。
感知したスネイトの力を頼りに何とか突攻を掛けるも、サリオンの攻撃は受け流されてしまった。
周囲にレヴィンの力は感じられない。
サリオンは激昂する。
「貴様ぁぁ! 良くもやってくれたなぁぁぁ!」
「それはこっちのセリフだ。折角の異世界人が消滅してしまった」
「阿呆か貴様ぁぁぁ! 自分がやったんだろぉぉぉ!」
「そもそもお前が邪魔しに来なければ、こんなことにはならなかった」
「そもそもって……。貴様がこっちに侵入しなければ良かったんだろうがぁぁ!」
「やれやれ、話にならんな」
「それはこっちのセリフだぁぁ!」
ハァハァと肩で息をするサリオン。
どうやら怒りとツッコミの連発でドッと疲れが押し寄せてきたようだ。
その時、辺り一面がクレーターと化した爆心地で時空の断裂が発生する。
それを間近で目撃したサリオンが頭を抱えて
「このマジキチ侵入者に大事な異世界人を殺されたと思ったら、次は
「お前も大変だな」
「って何、自分は関係ないみたいなこと言ってんだよ! 全部、貴様のせいなんだよ! 自覚しろよ! そこんとこぉ!」
その時、ノリノリでツッコミを入れるサリオンの目に信じられないものが飛び込んでくる。
出現した時空の断裂から手が覗く。
そしてレヴィンの顔がひょっこりはんのように現れたのだ。
「ふー。何とかなったわ……。危ねぇ危ねぇ……」
そうのんびりした口調でボヤきながらレヴィンは断裂から脱出した。
「え? レヴィンさん?」
「おお、サリオンか。いやー流石にちょっと焦ったわ」
スネイトもそれを見て茫然としている。
開いた口がふさがらないようだ。
「【
レヴィンがそう言い終えると時空の断裂が閉じられる。
これは
「おし! 回復もできたし、いっちょ続きといきましょうかね」
レヴィンはまるで散歩に行くかのような気軽な口調でそう言うと、未だ茫然とするスネイトとの間合いを一気に詰める。
反応が遅れたスネイトの
レヴィンは呑気にこいつらも
そしてスネイトが倒れ込もうとしたところを脳天に
更に、それに膝蹴りを合わせて頭を上げさせたところで裏拳、金的を喰らわせた上で魔法を放った。
【
対象者を茨で
これより強力な魔法に【
全身を絡め取られ、息も絶え絶えなスネイト。
「に……んげ……がぁ……」
さながら十字架に
「これで倒れられない」
最早、勝負は決した。
それからレヴィンの魔力を込めた連撃を延々と喰らい続けたスネイトは、反撃に出ることもできぬまま遂に落ちたのであった。
「おし! 俺の勝ち!」
十五歳の無邪気な笑顔でサリオンに勝利宣言をするレヴィン。
目の前で同格とも言える存在をフルボッコにしたレヴィンの笑みが、サリオンには
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