第25話 レヴィン、朝刊を読む
六月に入り、アウステリア王国の東の隣国である、インペリア王国がアイオロス王国へと攻め入ったと言う。
今朝の朝刊には、大々的に開戦の文字が躍っていた。
原因は、長年に渡って争いの火種となってきた、領土問題である。
問題の領土である、ゲルニード地方は、アイオロス王国の前身である、アイテール帝國時代にインペリア王国が売却した土地であった。
そのアイテール帝國が倒れ、アイオロス王国が成立した頃から、インペリア王国はアイオロス王国のゲルニード地方統治は正当性がないと難癖をつけ始めたのだ。
これまでも度々、小規模な紛争が起こっていたのだが、今回、大規模な戦争に発展したらしい。
アウステリア王国、インペリア王国、そして東のレガリア王国は兄弟国家と言われ、三国で通商を結び、長年連携を取りあっている列強国だ。
アウステリア王国は今回の侵攻をいち早く支持した。
朝刊には、インペリア王国とアイオロス王国の戦力分析や、勝敗予想などが掲載されている。
戦争も関係ない国からすれば一種の娯楽のようなものなのだ。
記事は、大衆受けするように面白おかしく書かれている。
転じて、アウステリア王国の西側でも戦乱が続いているようだ。
ナーガ海沿岸の都市国家連合と正統な後継国家を名乗るシ・ナーガ民国は相変わらず睨み合っているし、あちこちで
各地で難民が発生し、一部はアウステリア王国にも流入してきている。
また、シ・ナーガ民国は南だけでなく北にも敵を抱えている。
こちらもシ・ナーガ帝國の後継国家を名乗るセプト・ナーガ帝國だ。
こちらはガンガン武力衝突が起こっており、現時点では、セプト・ナーガ帝國が優勢であるという。
その様子を静観しているのが、シ・ナーガ民国の北西に位置する傭兵国家、ハスカールである。この国もシ・ナーガ帝國から分裂した国家であるが、国民皆兵を
国内に目を向けると、どこからかマルムス教なる宗教が入ってきているという話だ。多神教国家である、アウステリア王国は他国の神々にも寛容であった。
当然、マルムス教の教えを説く者たちも弾圧などされず、むしろ保護されてきたのであるが、逆にマルムス教側がアウステリア王国の神々を否定するという事態が起こっているという。
それに対し、現在、神殿勢力とマルムス教勢力は、話し合いの場を設けているというが、マルムス教勢力が頑なに態度を変えないため、
その教えは貧困者の救済を謳っており、搾取する者される者の対立を煽っていた。
スラム街を中心に教えが浸透していっている状況であり、国家も頭を痛めているという。
他に目立った記事と言えば、精霊の森の東側に豚人が大規模な拠点を造っていることだろう。それはもう村とは呼べない程の規模のようだ。
豚人の知能は高い。放置すれば商人や旅人、ひいては探求者にも脅威は及ぶだろうことは想像に難くない。
現在、探求者ギルドで慎重に調査が進められていると言う話である。
レヴィンは、情報を重視していた。
なので、基本的に毎日朝刊を読む。図書館に通う。
そして、探求者ギルドの資料を漁る。
例え自分の力が及ばないものであったも、頭に入れておくだけでもしたいのだ。
様々な知識と情報は、行動し、選択を行う上で、役に立つ。
選択肢が広がるだけで、未来の可能性は無限大なのだ。
レヴィンはこれらの情報が、自分にどう関わってくるか、今日も考え続ける。
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