第133話 竜門ダムでバイク談義?
佐藤くん実体化計画は、バイクを置いた後にトイレに行く途中で呼び出し。
その後何食わぬ顔で「ご近所の佐藤くんが来てた」という話で持っていこうということになった。
以前はるなっちに佐藤くんは「回覧板を持ってきた近所の人」という設定で目撃されているので、ここで出会っても「友人たちと来てました」という言い訳が通じるであろうという話。
「割と雑な設定ですね」
「つべこべ言わない。後で合流する時までに、ここの竜を何とかしておいてよ」
「契約は行わないですか?」
「放っておいてもいい雄龍でしょう?」
「人間の女子に割と執着する竜ですから、一回挨拶して「また来ます」とか言ってた方がいいと思いますよ。
もうさくらさんとしのぶさんの気配を察して、自分と言葉を交わせる女子がきたとうずうずしてます」
「いやらしいオッサンみたいね」
「竜それぞれに好みがありますから」
ということで、佐藤くんににしばらく竜を任せて、まずは先に行ったヒナっちとはるなっちを追いかける。
しのぶちゃんは「ちょっと長距離乗って疲れました」と言って屋根のある休憩所で休んでいるけど。
これはそのヤラシイ竜と会わないようにするために避難してる状態。
うっかり出会うと竜と会話しないといけないし、他の二人がいるところで竜と話すのは難しいので。
だって、なんか一人で空中に向かって話してるようにしか見えないし。
私は佐藤くんを出した時点で、もうこの竜に存在を認識されているので逃げるわけにはいかないの。
後で私が竜と会話してる時は、しのぶちゃんが代わりにこちらにやってきて二人の相手をしてくれるように計画をしている。
しのぶちゃんは普通に龍が見えるから、特に合図とかしなくても大体タイミングはわかるということ。
私は佐藤くんを実体化させてる時しか見えないけど、いつも見えてる状態って一体どんな感じなのかしら。
普通の人達と違う世界を見ながら、それでも普通に生活するというのはどんな感じなのだろう?
ぼんやりとそんなこと考えながらヒナっちのとこに行くと、二人は大いに盛り上がっていた
「大きいわね」
「この湖ではボートの国体とかあったし、ワカサギも釣れるんだって」
「わかさぎって氷に穴あけて釣るやつ?」
「それは北の国だけ。箱根の湖でもワカサギ釣れるじゃん」
箱根、湖、使徒が来るところね
私はしのぶちゃんの様子を見に行ってたという話になっているので、具合などを聞かれてしまうが、「少し休めばこっちに来るって」と言って誤魔化す。
「やっぱり400cc連中の間に125ccだから、疲れたのかしらね」
「排気量小さいと疲れるの?」
私がそう聞くと
「ギアチェンジとか細々しないといけないでしょ。アクセルとかも捻りがいつもフル状態とかになるし。腕とか足とか、結構疲れるものなのよ」
「ちょっと今回遠出しすぎたかな?」
「距離よりも道がグネグネだから特に気を使うし」
などと二人でしのぶちゃんがつかれる原因を語っているが。確かに、わたしたちよりは疲れてる感じがあったのはそういう理由なのね。
私は最初からスーパーフォア400だから、小さい排気量の感覚がちょっと分かりにくい。
二人は125ccから400まで乗りこなしてるからその違いがわかるというものなのね。
私も125ccに乗った方がいいのかしら。
などとついうっかり口を滑らせてしまうと、二人が食らいついてきた。
「ならスーパーカブよ。まずそれに乗って全てを知ることね」
「ホンダばっかりね。いっそ全く違う系列乗ってみたら?
YAMAHAとかカワサキとか」
「その辺に125ccとかあったっけ?」
「スクーターが中心かな」
「ギアついてないと」
「z125なんかちっちゃくていいじゃん」
「だったらグロム買うでしょ」
「YAMAHAはスクーターばっかだし。横浜で乗ったトリシティとか?」
「だったらpcxがコスパいいわ」
「suzukiは、GSX125シリーズ?」
「田中が乗ってるからおそろだと思われるわ、輸入車は勧めないの?」
「壊れるからスーパーフォアとか乗ってる人には無理よ」
「それどういう意味?」
つい口を挟んでしまうと
「HONDAのバイクは壊れにくいというか、ほぼ壊れないから自分で修理とかしたこともないし、エンジンオイルも交換したことないでしょ。
輸入車は、当たり外れがあってハズレに当たると乗ってる時間より入院してる時間の方が長いとかあるからね。
本当はスヴァルトピレン125とかかっこいいんだけど、バイクの機嫌を見ながら走る目を持ってないとお勧めしない」
「なにそれ」
「壊れる前兆、気配みたいなのを感じられるかどうか。
それはいくつもバイク乗ってないとなかなかわからないから」
「バイク屋の娘は感覚が鋭いってことね」
そんなこんな、バイクの話をしながらダムの上から風景を眺めるということをしているわけだけど。
広大な自然と巨大な人工物に人工の湖、
その一体となった風景が珍しいものなので、ついつい話をしながらも遠くから近くまで、観察しながら歩いてしまう。
そして、目の端には佐藤くんが竜をなんかしてる姿も見えるけど。
果たして大丈夫なのかしら?
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