第132話 九州のダムにも竜いるの?
ヒナっちの謎の趣味のせいで、熊本と大分の県境にある「松原ダム」から菊池市の「龍門ダム」へ向かうルートを進む。
というか、ダム巡りとかおじさんの趣味っぽくて女子高生のやることではないと思うのだけれど。
ただ、ダムに対しての熱い話をヒナっちから聞くとちょっと面白そうではある。
「松原ダムは重力式コンクリートダムで、近くにある下筌ダムはアーチ式、二つの異なる形があるから見てて楽しいわよ!」
などとおっしゃる。
そこからダムについての講義が始まるが、まぁ簡単にいうと重力式はめっちゃ分厚くしたコンクリとか土で水止めるやつで、アーチ式は水圧をアーチ型のコンクリで抑えって耐えるやつだとか。
「アーチ式の方が使うコンクリの量が少なくてすむけど、両岸が丈夫じゃないと難しいのよ、あの有名な黒部ダムとかそれで作りがちょっと変わっているんだから」
と言われても、その黒部ダムが何かがよくわからない。
まぁ、なんかすごいダムなのだろう。
実際に現場に来て見てみると、結構な迫力で上から見下ろすと「すごっ!」と思わず声が出てしまうくらい。
バイクを横の駐車場に停めて近くを歩いたりして見たけど、ダムの上を道路が走ってるのね。
ぼんやりしてたら橋の上走ってる程度にしか思わないわ。
「下筌ダムはね、「蜂の巣城紛争」とかで有名なのよ。資料館もあるから見ていこうよ」
マニアックすぎてよくわからない。
とにかく、地元の人となんか争ってうまいこと話がまとまってダムができたという経緯らしい。
ここで反対運動をしてた人が男気がる人で、とかなんか話してるけど私の興味は、しのぶちゃんがこっそり話してくる竜の方に向いている。
「ほら、あの下筌ダムのとこに1匹緑のがいて、松原ダムのとこに2匹の白い龍がいますよ」
「こいつら雄?」
「ええ。でもここは中継地点だからそんなに長くはいないようです」
「住んでるわけじゃないの?」
「人間の単位で見ると数十年同じとこにいるから住んでるようなものですけど、この龍たちからすると、1ヶ月くらいの出張程度の感覚みたいです」
なるほど、種子島の竜とかもそうだったのかしら。
竜の感覚で見ると、あっという間に自分の住んでるところにダムができて池ができて、勝手にリフォームされた感じになって居心地はいいのかしら?
「この湖ができたから彼らはやってきてますから。
その前はこの辺に竜とかいなかったみたいです」
へぇ、リフォーム終わってから来てるわけね。
ここから、私と佐藤くんの心の会話
『佐藤くん』
「なんですか?」
「の竜とか契約しなくてもいいの?」
「彼らはまだどの竜に婚姻をするか決めかねている自由竜です。ここで契約しても特に意味はないです」
「自由竜ってなに?」
「阿蘇の大竜と今までに婚姻を結んだものは大抵外輪山の上に住んでいます。
それらは大竜を囲むように、守るように存在しているので大竜とのつながりが強いものたちです。
だから、大竜に直に話を持っていくと大変なことになったでしょう?
それを防ぐために周りの雄龍に間をあいだを取りもってもらう形を取ってますよね。
だから、自由龍は誰とも婚姻をしてないので、さくらさんが契約してもなんの意味もないと思います」
「つまり、あぶれてる龍だから相手にしても意味なしってことね」
「契約しても問題はないですが、多分この辺の地域に繋がりの強いものがいると思うので勝手に話を持っていかない方がいいでしょう」
「それって、しのぶちゃんとこの家みたいなの?」
「ええ、田舎にはそういう取り決めがあったりします」
なるほど、なかなか面倒臭い感じなので無視することにしよう。
ヒナっちと、それに感化されてはるなっちもダムの魅力に引き込まれている感じがある。元々マニアックだったから、ダムの形とか意味とか知っていくとなんか楽しくなっていくのだろう。
「次に行くダム、龍門ダムは日本一の重力式コンクリートとロックフィルのコンバインダムなのよ!」
コンバインって、5つのメカが合体してロボットになって超電磁ヨーヨーを使ったりするのかしら。
それにロックフィルってなんかかっこいい響き。
なんか秘密基地みたいなすごいダムなのかしら。
なんて考えていると、しのぶちゃんが
「あのダムにいる龍はちょっと面倒臭いから、佐藤くん出してた方がいいですよ」
「私が無視してたらいいんじゃないの?」
「しつこいですよ、あそこの龍。ツーリング中ずーっと雨が追いかけてくるかもしれませんし」
「それは困るわね」
ということで、次の場所に移動する前に、こっそり佐藤くんをどこで実体化させるかという相談を少ししのぶちゃんと行うこととなった。
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