第85話 屋久島の資料館と博物館と

到着してバイクの並んでいるところへと降りていく。

例の大学生達はさっさと降りていたらしく、私たちに軽く手を上げる程度であまり深入りしてくることはなかった。

近づいてはいけない、変なマニアな女達、という認識になったのかなぁ。


おじさん達が固定してた縄を緩めてくれるけど、バイクのシートに縄の跡がちょっと残ってるけど、乗ってれば消えるかな。


他の車が出て行ってからバイクの順番になるので、ヘルメット被ったり、高藤先輩から取り付けられたゴープロの調子を見たり。

降りてからの行き先はまず宮之浦港すぐ横にある「屋久島環境文化センター」に行き屋久島を学ぶらしい。映像とか見られるって話と軽く昼食もここのレストランでということで。「人魚のピラフってのが食べたくて」とは高藤先輩だが。人魚の肉が入ってるのかしら?それだとみんな八尾比丘尼になっちゃうけど。

形が人魚?


そこから屋久島を東に大体1/4、回って安房という港へ。ここは高速船の到着するとこなので早く着たい場合はここからスタートなのだとか。

そこから「屋久杉自然館」で屋久杉を学び、そこから紀元杉、屋久杉ランド、といく予定。

多分そこで時間が来るので港に戻って民宿タンポポに向かう。


先頭はヒナっち、次がはるなっち、そして高藤先輩と最後尾が私と来る時と同じフォーメーション。

まぁでも、さっき蕎麦食べたのであまりお腹は空いてないかな。


順番が来て、船を降りると外はいい天気。

太陽がさっと私たちを照らし、そしてすぐ横にある屋久島環境文化センターに着いてしまった。


ほとんど走ってない、ほんとすぐ横なのね。


そこでバイクを降りて入場料を払って中を見学。

25分の屋久島紹介ビデオが流れるシアタールームがあるので、それが始まるまで展示を見るけど、なかなか面白い。

南の島なのに雪も上の方では積もるらしく、2メートルくらい積もるとかそんな話も以前はあったのだとか。

一方、町は平均気温が10度を下回ることはなく雪が降るのも数年に一度と言われるくらいだそう。

野生動物は鹿と猿だけでたぬき、狐、猪とかうさぎはいないそうだけれど、最近は狸の目撃例とか、猪もごく稀に目撃されたことがあったらしい。

泳いできたのではないか、という話もあるそう。そんな数時間も泳いで来るかなあ、それってほとんど遭難してるってことじゃないの?


人二万シカ二万サル二万、と言われるらしい。

何やら7000年くらい前に起こった鬼界カルデラ噴火の火砕流とかで一回焼き払われてるらしく、その後住み着いたのか生き残りの子孫が鹿と猿とからしいけど。

その時人間がいたら全滅してるわよね。


それに雨ばかりで土壌が痩せていて、杉もいきなり太ることができないのでじわじわと大きくなり、しかも樹木内に油分を蓄えることで腐りにくくして生き残るという結構過酷なところ。

コメがまともに撮れないので年貢がその屋久杉を板にして代わりにしてたくらいなので、昔は貧しい島だったとかなんだとか。

今の雰囲気だけ見ているとそんな島には見えないけど、たくさんの人の努力があったのね。


屋久杉は昔は神が住んでるから切ったらダメって言われてたのを、ある役人の人が「斧を立てかけて、倒れたら神が住んでる、倒れてないなら誰も住んでないから切っていい」とかそういう理屈つけて切るようにした話もあり。それで年貢を杉板で払えるようになって島の人たちが助かったというものらしい。やっぱり普通、でかい木は切ったら祟りあるとか思うわよ。

その話を読んで、

「なんか西洋の妖精の話に似てて面白い」

とヒナっちが言う。


何やら樹木の根っこに砂の山を作って鏡でてっぺんを平にし、鏡をそこに置いて一晩置いておいて。

翌日見に行って、その砂の山に小さな足跡や天辺でダンスをしたような跡があったら、その樹木には妖精が住んでいるのでその木を切ってはいけないような話があるのだとか。


「この斧、信心深い人が夜中倒しにきたりしなかったのかしら」


「昔の村社会で、ギリギリの生活してる人がそんな自然保護団体みたいなことしないわよ。衣食住足りて暇でお金がある人たちしか「森を助ける」とか言えないわよ」


とはるなっちが言う。まぁ確かにそうだわ。


映像がはじまるというアナウンスがあったので見にいくと、さっきの老夫婦も居てちょと挨拶したり。


映像資料はなかなか面白かった。

その後はレストラン行って、高藤先輩が食べたいと言ってた「人魚のピラフ」を食べることにしたが、メニュー写真を見て「なんじゃそりゃ」と思わず思ってしまった。


そして運ばれてきたものは。


ピラフの上に、飛び魚が真っ二つに割られた姿あげが乗っているのだ。


「これが、人魚・・・」


「人魚・・・ねぇ」


「飛び魚ピラフじゃダメだったのかしら」


「これ頭から食べていいのかな?」


4人それぞれの反応がこんな感じ。

味は美味しかったので文句はないが、ネーミングはどうなのかと思ったくらい。

他にも人魚シリーズがあったので、大体全部あんな感じなのだろう。ヒレまで食べられたので面白かったけれど。


屋久島の歴史、知識、そして縄文杉までいくルートや行き方についての情報も得ることができたのでよかったわ。ゴールドウイングのご夫婦は「流石に縄文杉までいく元気はないわ」と言っていて、バイクで移動できる範囲だけで屋久島を楽しむという話。今日は西武林道を走ってホテルへと移動するのだとか。

私たちは明後日通るところね。

次は屋久杉自然館へしかし「原始の森がある島」とか言うから海の横から大森林になってて、屋久杉がバンバン生えててその隙間で人が生活してるのか、と思ったりしてたけど。


普通に地方都市な感じで、天草とかの海沿いを走ってるのと全く変わらない気分。

島を回るしっかりとした道路を通っていくといくつもの集落を超えていき、それぞれに人が住み家があり田んぼがあり港があり。


ただ違うのは、高い山が常に右側にずーっと見えてることだけ。

海から一気に1000メートル越えの山が聳え立っているから阿蘇とも違う感じ。


海は打ち寄せる波が荒々しく、その辺のビーチで遊べるような雰囲気ではないし。

太平洋に浮かぶ島はこんな感じなのかしらね。


安房に到着し、屋久杉自然館へと向かう。

そこでは屋久杉に関してのいろんな情報が得られて面白かった。

大きな杉には名前がついているのね。


縄文杉も、昔は近くに行けたらしいけど今はウッドデッキで囲われてその上から見るだけだって。

人が根っこを踏んでしまうと弱っていくからということ。

あと、屋久島は花崗岩の上に薄い表土が乗ってるくらいなので根っこを深く張れないから横に広く伸びてるらしいので人間が踏むといかんとかなんとか。


実物の屋久杉が置いてあるけど、こんな大きなのを江戸時代の人とか切り倒してたのかと思うと、人間すごいと思う。

専用のチェーンソーとかもすっごい長くて重くて、ジェイソンも片手では振り回せなさそうだし。


1000年以上生きたものを人間の都合で切ってしまう、というのもなんだか微妙な気分になるけど、それで人が生きていくためには仕方ないものなのよね。


「ってことはさ、江戸時代に縄文杉より古い木があっても切られてしまってるってことよね?もっと近くにあったら5時間もかけて山登らなくてもよかったのにね」


「でも、人里近いとこにそんな古い木があったのかな、縄文杉レベルに山奥に行かないと古いのないんじゃない?」


「これからいく紀元杉があるけど、それも結構山奥だから江戸時代に切られた中に5千年とか7千年とかの杉はなかったんじゃないかしらね」


などと杉談義で盛り上がる。

何はともあれ、明日の縄文杉にいくのがまた楽しみになってきた。


外に出ると天気が良く、気温は15度とかなので、ライダージャケットの上着が暑く感じてしまう。

なので内側の服を脱いで行こうとすると、高藤先輩に止められる。


「紀元杉のあるとこは雪が残ることもあるくらい、寒いらしいわ。まだ服は着込んでた方がいいかも」


と言われてしまう。確かに標高1200メートルとか軽く書いてあるけど、バイクでいけるというのはありがたいわね。


ここから、実際に生えている屋久杉を見にいくことになるのか。

千年を超えて生きている生物というものは、一体どんな雰囲気なんだろう。








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