第69話 海と思い出と
海岸でひたすら走り回ったあと、砂浜に腰を下ろし海を眺める。
砂の質は細かいけれど、払うとすぐに落ちるくらい。
ぼんやりと、なんとなく、この砂浜に来たことがあるような気がするなぁ。
と思いながら青い海を眺める。砂浜なんてどこでも同じと感じてたけど、幼い時に来て、めちゃくちゃ広くて遠くまで歩いていける海岸に母と行った記憶があり。
そこでそういえば、母だけではなくもう一人、男の人と一緒にボートで沖まで連れて行かれたような気がする。
でも、それはここだったのか、天草の海岸だったのかよくわからない。
家に帰って、ちょっと写真調べてみよう。
「なんで、ここに来ようと思ったの?」
はるなっちに聞くと、
「高速っぽいとこに乗ってみたかったし。本当の高速だと料金所があるでしょ?ここならそれが無いから楽かなって。
あと寒いのに山より海の方がいいでしょ」
「で、CB400SSはどうだった?」
ヒナっちにがさっき捕まえたカニを弄びながら聞く
「全然カブと違うけど、パワーの出方とかは似たとこあるから割とすんなりのれてるわね。カブが大きくなった、ってそんな感じ。軽いから横風が吹く時はちょっと怖かったけどね」
「私のも面積大きいから、横風はちょっと辛かったな」
そんなに横風強かったとこあったかしら?
私が二人の話を聞いて首を傾げていると
「桜のは重たいからちょっと風が吹いたくらいじゃ気づかないのよ。重心が中心にまとまってるから安定してるし」
「BMWのこれは軽いのに横面積が広いから横風は結構辛い。
でも、高速で走る時の風除け効果は抜群だからデュークより疲れないかな」
「390デューク乗ったことあるの?」
「一応、家にある代車で中免で乗れるのは全部試した」
「バイクがたくさんあるといいわね」
「でも、たくさんありすぎて思い入れのあるバイクが無いといえば無い。
はるなみたいにカブがいいとか、オズっちみたいにスーパーフォアがいいとか、そんな感覚がなかなか生まれないのがね」
「ヒナっち。好きなバイクないの?」
「まだ、どれに乗りたいとか決まってないってとこ。
使いやすくて乗りやすくて、って実用的なとこ考えてしまう」
「外車なんて雰囲気で乗るもんでしょ」
「その雰囲気がなかなかよくわからない」
なんて話をしつつ、ヒナっちはさっき捕まえてたカニを海に投げてリリースした。
カニ、大丈夫かしら。
「いっそ古いバイクでも探してみたら?新しいのが気に入らないだけかもしれないじゃない」
「古いバイクか」
「バイク屋の娘なんだから、多少壊れやすい古い外車でも大丈夫でしょ」
ヒナっちはそれを聞いて何か考える様子を見せている。割とはるなっちの言ったことが良かったのかしら。
私は、古くて壊れるバイクとか乗りたく無いけどな。
「古いバイクに乗るのは、雰囲気重視、それと電子制御じゃないバイクに乗りたいという人達がそれを選ぶのよ」
私の意見にはるなっちが答えてくれたけど。
自分で何かとできる人達がそれ買うのよね。
そのあと、海岸を端っこから端っこまで歩いてから、道の駅で食事を取ることに。
海鮮の美味しそうなメニューが並んでいて、日替わり定食でも十分な感じ。
「昔、ここで塩サバ定食選んだら、鯖の半身が出てきて、それがでかいし美味しいし、小さい時だったけど感動した記憶があるわ」
はるなっちは以前ここにきたことあったんだ。
「だから、目的地にしたのよ。でも、その塩サバ定食は日替わりだったからもう食べられないのよね残念」
そう言いながら、海鮮丼を頼んでたりする。
メヒカリの唐揚げとタコの天ぷら定食が私の昼食。
ヒナっちは刺身定食。
それぞれでおかずをトレードしながら食べたけど、おいしかった。
今回自分たちが乗ってきたバイクの乗り味についての話になり、それぞれの違いを聞くことができて面白かった。
私のスーパーフォアは基本的に安定志向で横風にも強いけど、正面からの風は仕方ない作りとか。
はるなっちのCB400SSは単気筒ならではのスタートダッシュはいいけど伸びがなく、アクセル開けるほどに振動が激しくなってくるので自動車専用道路よりスピードの上がる普通の高速道路で100km巡行とかは辛そう、とか。
一番排気量が小さいBMW310GSは、高速巡航は割と得意だけど横風にはあまり強く無いとか。排気量がそれなりなのでスピード、加速が400より劣るとか。
スタートダッシュは誰よりもはるなっちが早く、最高速度は私が一番早いだろうとか。
そんな話をしつつ食事を終え、そのあとは物産館や、塩作ってるとこを覗いてみたり。
生きた貝とか買って帰るのかしら。
日扇貝という派手な色彩のホタテみたいな貝がたくさん生簀に入ってる。カラフルな南国の貝みたいだけど熊本で生産されてるらしい。
紫とか黄色とか赤とか、これ小学生に見せたら喜びそう。
「ここでは買って帰れないけど、桜のとこ持っていって、庭のバーベキュー台で焼いて食べると美味しそうね」
「郵送できるって書いてある」
「あ、じゃあチラシもらって帰ろう」
とかそんな話したり。
土産を買っても持ち帰る余裕がないので、ただ店を見て冷やかして戻ってきただけ。
そして、これからまた家に帰ることになるけど
「桜のとこ泊まっていい?」
と二人から言われてしまい、今日の夜もまた賑やかになる予定になってしまった。
そこで、従姉妹と会って話す件について色々と聞きたいと言われてしまった。
私も相談したかったのでちょうどいい機会だ。
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