第24話 やまなみハイウェイ(途中まで)
そこから目的地、瀬の本レストハウスまで走っていく。
見渡す限りの草原と、緩やかなカーブに気持ちのいい風。
バイクで峠を走るのは緊張するけど、ここからは全くそんな気配がない。
アクセルを捻るほどにリズムに乗ってくるエンジン。
青い空がどこまでも広がり、その下に草原とまばらに生えている木々
この開放感はたまらない。
阿蘇パノラマラインでも開放感はあったけれど、地平線まで広がる草原を見られるこの道路は最高じゃない!
観光客も多いので、前に車がいてそんなにスピードが出せないけど、私たちにはとても良い感じ。
ゆっくり走りながら景色を眺める。
そして、草原の真っ直ぐな道路の途中ではヤエーをしてくるライダーたち。
「やまなみハイウェイはライダーが一生のうちに一度は走るべき道、としてよく紹介されてるくらいなのよ」
はるなっちが休憩中にそんなことを言ってたが、まさにそうだと思う。
アメリカとか大陸的な道路を走ってる気分になるわ。
行ったことないけど。
ハーレーとかアメリカン?とかそんな感じのバイクがとても似合う。
背もたれのついたやかましいバイク集団、と思っていたのはアメリカンというバイクの種類なのだとか。背もたれのないのややかましくないのもいるけれど、大抵はハーレーとかアメリカのバイクだという話。
確かに、牧場があって草原があってまっすぐな道があって、
ああいう大きなバイクでのんびり走るのには、この道は最高なのかもしれない。阿蘇でアメリカンバイクをよく見かけるのはそういう理由なのね。
すれ違うバイクも、赤いのとか青いのとか白いのとか、いろんな色を持ったバイクがいる。
そして、ほぼみんなヤエーをしてくる。
阿蘇パノラマラインとかでもここまでみんなしてこない気がするけど、開放的な気分になるとみんなしたくなるのかしらね。
私も最初は恐る恐る、はるなっちが手を降って、相手が反応してから手を挙げてたけど。
途中からは「どんな感じで手を挙げた方がかっこいいかしら」
などと考える余裕が出てきて、自分から手を振ってたりする。
今まですれ違う中で見たかっこいい手の挙げ方は、アメリカン集団の人達が右手でピースサインをさっと横に出してすれ違う感じ。
高藤先輩はすぐ対応して右手をさっと出してたけど。
右手?
アクセル捻る方を話したら止まってしまうじゃない。
何やらそんな仕組みがあるのかしら。それとも、スピード出してたら手を離してもスピード落ちないのかしら。
でもあれ、左手を上げるよりかっこいいわ、わかりやすいし。
真似したいけど、私には右手を離す度胸はないわね。
ほんと、ひたすら空と草原と、たまに針葉樹の森の中を通るくらいで、とても清々しい道。
こんなにいい道路があったなんて、今まで知らなかった。
父が残してくれたCB400スーパーフォア、最初は大きくて重たくて、もっと小さくてかわいいバイクがよかった、と思ったこともあるけど。
今はこれと一緒に走ることで、今まで知らなかった景色を感じ、その中を走ることが楽しくてたまらない。
車やバスなどに乗っているときは、景色は窓の外にある隔離された感じなのだけれど。バイクは、自分がその景色の中に入れて、一緒にその空間を共有している感じがある。
だから、その景色を共有している仲間としてヤエーを送りたくなるのかもしれない。
そんなことを考えていたら、目的地の瀬の本レストハウスへと到着。
ここにはバイクの用品メーカーが経営してるライダーズカフェなるものがあるというのできてみたら、めちゃくちゃバイクと人がいて停められなかった。
なんで、ここにこんなにバイクがいるの?九州中のバイクが集まってんの?
というくらいみっちり集まってて、私たちにはその間に止める勇気はなかったわ。
なので、木陰の片隅まで移動してそこに3人でバイクを止める。
近くの自動販売機で缶コーヒーを買い、ベンチで休むことにした。ここから高藤先輩と別れる事になる。
小国町にある家へと帰るからだ。
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