第20話 SR400
そして、高藤先輩に言われた通りにカメラをバックパックに放り込んで、ツーリングに行くことに。
高いカメラだということが発覚したので、厳重に壊れないように服とか詰め込んだ間に入れ込んで。
なんか我が親ながら必要なとこ、趣味には金を惜しまないとこが二人ともあったのだな。
今日の行き先は南阿蘇の物産館、そこからケニーロードの展望所、そして田舎の裏道を走りながら高森の月周り公園までを走り、箱石峠を越えてやまなみハイウェイの入り口あたりまでを目標としている。主に蕎麦畑と田んぼのコントラストを撮影したいと言うのでそっちメインで動くことに。
箱石峠とか行ったことないわ、大丈夫かしら。
「今日はやまなみハイウェイはバイク多いでしょうから、いけたらでいいわね」」
と言いながら楽しそうに高藤先輩はSRのキックレバーを引き出し、ひょいとまたがり何度かレバーを足で動かした後。一気に踏み込みエンジンを始動させる。
ドッドドドとエンジンがかかり、低い音がガレージに響く。
「結構いい音するんですね」
とはるなっちが話しかけると
「ヤマハは楽器屋だから、このマフラーから出てくる音にまでこだわって作っているのよ。そのこだわりがたまらないのよ」
と言ってる。
私にとってはその辺の違いがよくわからないけれど、うるさいマフラー音を響かせている人達のよりは心地よい音の響きだと感じられる。
私の乗ってるスーパーフォアはキュイーンとかシューんとかドヒュヒュヒュといった感じのエンジン音なのだけれど。
歯切れのいいエンジン音は割と好みかも。
「単気筒エンジンは心臓の鼓動みたいなのがあって、それがいいと思うのよ。
別にスーパーフォアみたいなのを否定してるわけではないけど、バイクと人間が近い感じがあってね」
「そう、空冷単気筒エンジンは至高ですよね」
とスーパーカブ乗りのはるなっちが反応している。そういえばスーパーカブ110も空冷単気筒だった。
でも、音は郵便局の人のバイクなので迫力はない。
私も先日乗ってみたけど、割と振動が激しいのにびっくりしたのがあって。400ccだとどうなんだろうと疑問に思えた。
それを言うと
「またがってみる?」
と高藤先輩に言われ、ちょっと失礼と乗ってみると。
体が揺さぶられるカンジが半端なく、巨大な振動板の上に乗っけられてるかのような状態。スーパーカブと比べ物にならない振動感だわ。
これ、慣れたらいい感じになるのかしら。これに比べるとスーパーフォアとかラグジュアリーな乗り味じゃない。
「この振動がクセになるのよ」
そういって笑っているが、私にはまだ不快な振動にしか思えない。
「スロットルを捻って加速していくと、また振動が強くなるのよ。
その変化が、バイクの心拍数が上がっていく、自分の心拍数が上がっていく感じとリンクしてとってもいい感じになるのだから」
運転してみないとわからない、というものなのかしら。
とりあえず、私にはまだ早い乗り物だと言うのは分かったわ。
スーパーフォアが乗りやすいバイク、といろんなとこで言われてる理由もわかる気がする。
こうして3台並べてみると、私のが一番ゴツい感じなのね。
せめて、色が青だったらよかったのに。
こないだHONDAのお店で見たカラーリングた忘れられない。
あんな爽やかな色だったら私もヘルメットの色とか合わせて楽しんでみたかったなぁ。
バイクに乗り始めた時は、安全性とか被り心地とかそんな実用面ばかり気にして道具を選んでいたけれど。
はるなっちは特にそんな感じだし。
高藤先輩のように、おしゃれに決める乗り方もあることに気付かされたところ。
でも、これはスタイルが良くて細身でかっこよくないと難しいわね。
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