第3話 普通二輪免許

我が家にあるバイクに乗るには、普通二輪免許、と言うものが必要らしい。


125ccのバイクだと小型限定普通二輪免許で良いらしく、こっちは免許が安く取れる。


AT小型限定普通二輪免許だったら、オートマの125ccまでだったら乗れるらしい。


通学でスクーターとか乗ってる人たちは大体この二つのうちどちらかという話。

ナンバーがピンク色なのはそういう意味があったのね。


スクーターでいいし。

いっそこちらの方が、と思って調べてみるとバイクをどこかで買うことを考えると、普通二輪免許をとったほうが安くつく。


うーん。


父の残してくれたCB400スーパーフォア。


跨ってみると、私の身長でも足が両足の先端がつくくらい。

でも、大きい。自転車なんかと比べ物にならないくらい大きい。

重さもガソリン入れると200kg近くあるとかでこけたら死ぬんじゃないかって心配になってくる。


「これ、ガードがしっかりついてるから大丈夫」


と江川さんが言ってくれたけれど、どうやらこのパイプが両側に張り出しているのがガードというものらしい。

これでこけても足を挟み込むことがないって言われてもね。


こけて滑ってきたら潰されるじゃないですか。

なんて話をしてたら「こけたらバイクを投げ捨てること」と恐ろしいことも言われる。


バイクって、なんかすっごい怖い乗り物なんじゃないかしら。


「思うんだけど、なぜお父さんはこのバイクを残していったんだろうね?

さくらちゃんがこれに乗ってみると、その意味がわかるかもよ」


と言われてしまうと、何か父の意思を継ぐためにロボットに乗る主人公みたいな気分になってしまう。


でも、江川さんに言われたように。

お父さんについては、全く何も知らないまま育ってきて。

会えるかと思ったら既になくなっていて。


お父さんと、私を繋いでくれるのは、この家とこのバイクだけなのだと思うと。

やはり、バイクにも乗ってあげないといけない気にもなる。


とりあえず、2週間集中して免許を取れるコースに申し込んで、夏休みの前半は教習所に通うことになった。


目指せ普通二輪免許。



初日は緊張して、家に帰ってきたら倒れ伏してしまった。

教習所からもらってきた本にも目を通さないといけないけれど、頭の中がごちゃごちゃになってしまって


「大人の人って、すごい」


と素直に思ってる。

あんなに面倒くさい決まり事のある道路を、あんなに簡単に車運転して走っているなんて。


ただ、教習所のバイクはちょっと色々ついているけど家にあるのと同じだったので安心した。江川さんが言った通りだ。


そして実技が始まった途端、もうだめって感じになる。


クラッチって何?

半クラ?スロットル?ウインカー?

ギアってなに?ニュートラル?


わからない単語が次々と押し寄せパニックになる。

で、コケる。


数日通って、なんとなく仕組みがわかってきて体がついてくるようになった。

家に帰ってからは、ガレージで父のバイクに跨って、ギアを入れたり半クラ練習したり。

でも、教習所のバイクと家にあるのは、色々アクセルやギア、クラッチの硬さが違っててガチャガチャ練習してても難しい。


こけて引き起こす、江川さんがいる時に家のバイクを倒して練習したり。

「こうやって、足と腰を先に下に入れてから重心を同じにして、足の力で起こすといいよ」


と言われるけれど、咄嗟にできない。つい腕の力で起こそうとしてしまうし。


でも、教習所では練習のかいあって、順調に実技をクリアしていく。

その中で、スラロームやる時がクラッチの具合が難しかった。

それに、いつも乗ってる教習車と違うのに乗ってみると、全く感じが違うから何回かブオンブオンやってスラローム真っ直ぐいったこともあるし。

この、個体によって違うというのは、慣れていくしかないのかしら。

いや、自分に合う子を選べば卒業検定はいけるかも。


家でもCB400スーパーフォアにエンジンを入れて、ちょっと動かしてみることも増えていった。

と言ってもガレージの中でギアを入れたり、ちょっと半クラッチや一本橋の練習したりするくらい。

やぱり教習所のと違う。

反応がいいというか、まだ新しいからなのか。クラッチの具合が違うのでよく家のはエンストしてしまうのだけれど。

江川さんは「クラッチワイヤーの調整したらいい」と言ってくれるけど、私には何のことやらわからない。


教習も半分を過ぎたあたりで、みどりさんが人抱えもある箱を持ってきてくれた。


「これ、知り合いのバイク屋さんが在庫処分するからって安くもらったんだけど、使ってみる?」


と箱からヘルメットを取り出して見せてくれた。

「アライのラバイドネオか、アライのヘルメットなら安心だよ」

と江川さんが箱から出してきた白いヘルメットを持って語り始めた。

何やら安全基準のレベルがすごく高いのでレースなんかで使われているメーカーだとか。転けても滑るようになってるとか、シールドが開かないようにロックがついてるとかよくわからないことを話してくれる。


「つまり、安全なヘルメットってことよ」


とみどりさんが最後に言ってくれて納得した。


「これ、高いんじゃないですか?」


「いいのよ、頑張っているさくらちゃんのため。それにさっき言ったみたいに安く手に入ったのよ。これもつけてもらっちゃった」


と茶色の皮の手袋も出してくれた。


「これはデグナーじゃないか。そこまで安くない品なんだけどな」


「そこのお店では在庫として残っててたみたいなのよ」


江川さんが詳しいのはわかったが、どうやらお値段は高いらしいのであえて聞かないことにしよう。

後でネットで調べるのもやめておこう。


そんな感じでヘルメットを教習所から借りてたのをやめて、自前のヘルメットとグローブにしたところ。


一気に下手くそになってガタガタになってしまったり。

フルフェイスヘルメットは視界が狭いし。

新しい手袋は使いにくいし。


そこで、家でまた特訓。手に馴染むまで、視界がなれるまで、

乗ったり降りたり振り返ったり。

エンジンかけたり切ったり跨ったり。

外から見てる人がいたら超怪しい動きしてたけど、周りに人がいないから問題ないわ。

家も窓が広いので外目を気にするならカーテンをつけた方がいいのだけれど。

覗く人もいないでしょうから、家には寝室以外カーテンはつけてない。

だから家の電気を全て消して横になっていると、2階の窓からは天の川が見えたりすることも。


一人で寂しいと思うことはあるけれど、自然の中でゆっくりしていると二人で暮らしていた時とは違う雰囲気になる。

母親といるときと違う安らぎって感じかしら。


昼は教習所、夜はガレージで特訓。

次第に慣れてくるとグローブは手に馴染むしヘルメットも軽くて首に負担がかからない感じがあっていいし。

お値段がするものには、それなりに理由があるということかしら。


そうこうしているうちに卒業検定。


1回目は落ちた。


また費用がかかるのが精神にくる。


敗因はバイクが違ったから。

いつも使い慣れてるのではないものしか、そこになかったから仕方なかったのだけれど。

もっと他のにも慣れておかないと、と思いしばらく家でも半クラの練習。


そして、2回目で無事合格。

その後は免許センターへ行って、試験を受けて免許証を発行してもらう。

旭屋という話も聞いていたけれど、私は普通に勉強して試験はクリアよ。


普通二輪免許


ついに手にしたけれど。

これから、我が家にあるCB400スーパーフォアに乗っていくことになるけれど。


バイクに乗る上で必要なものって何かしら?








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