おまけ

 フリッツは病室の扉の隙間から、抱き合う少女たちの様子を窺っていた。一緒に部屋を覗くMPが、「エレナちゃんが取られちゃったわね」と茶化してくる。


 扉を閉め、フリッツは自分より背が高いMPに噛みつく。


「あのな、俺と彼女はあくまで僚機なんだ! 取られたとかそんなこと思っちゃいねぇよ!」


 フリッツは自分の立場を必死に説明するが、MPは近所のおばさんのようにクスクス笑っていた。


「世知辛いわねぇ……」

「うるせぇ!」


 MPの脛を蹴るが、ビクともしない。がっしり太い骨を、強靭な筋肉が支えているのが解った。この屈強な女に抵抗する気のなくなったフリッツは、「渡しといてくれよ」と言ってチョコレートの入った袋を押し付ける。


「直接渡さないの? せっかくお見舞いに来たのに?」

「邪魔する訳にはいかないだろ?」


 病室の扉をチラリと見て、フリッツはその場を去る。後ろからMPの笑い声が聞こえた。


 自分の頬に手を当ててみると、燃えるように熱かった。去年インフルエンザを発症した時も、こんなに熱は出なかったのに……


「ホント、女子ってめんどくせぇ……」


 ボソリと吐き捨て、フリッツは拳を握りしめる。


「世話の焼ける僚機あいぼう だぜ。仕方ねぇから見守ってやるか……」


――終――

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