14話 新しい仲間との出会い
第3章が始まりました。
時系列的には、第1章の終わりからの続きになります。
逃亡中は、もう1つの愛称である「ルディ」を名乗る予定。
(コニーの正式な名前は、コルディーネといいます。以外にお嬢様名で、完全に名前負けしてます)
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私と師匠のアンバルが別れを惜しんでいる中、急に飛び込んできた男は、雰囲気は全く違うものの、容姿はノーリアに良く似ていた。
「姉さん、とりあえず、もぐりでも何でもいいから、医者が必要なんだよ。
もう、俺たちでは対処に限界があるんだ」
「誰かの国民登録権を使って誤魔化して、臨時で治療院に連れて行くことはできないの?」
この国では1~4等の国民権が無いと、国家からは国民とみなされず、最低限の教育や医療を含めた福祉を受ける事ができない。
反面、国民として登録するということは、税金や兵役等の義務が発生するため、貧しさのためにあえて子供の出生登録をしない家族も時々いた。特に、数年おきに災害が頻発していた、この10数年はその傾向が顕著だった。
「無理だ……。今回罹患しているのは、アデルライン様なんだ」
それを聞いた、アンバルやノーリアの顔色が変わった。
「アデル様だと! 一体どんな病気にかかったというんだ」
アンバルが問い詰める。
「毒蛇に噛まれたんだ」
状況は良くわからないものの、思わずコニーは口を挟んでしまった。
「毒蛇に対してなら、救護所に行けば、抗体薬はすぐに貰えますよ。とにかく、先にそれだけでも投与したほうが…」
毒蛇の抗体薬だけなら、国民権のいかんに関わらず、救護所や村役場等で、安価に手に入れる事ができる。
「ああ、抗体薬はすぐに投与した。でも、アレルギー反応が出てしまったんだ」
薬剤に対するアナフィラキシー症状なのだろうか。もしそうだとすると、瞬時の判断が生死を左右することになる。
「その患者さんは、今どんな状況なのですか?」
「うーん、全身が一瞬赤くなって、気分が悪いと言っていたけど、いっしょにもらったアレルギー対応の薬を与えたら、それは少しましにはなったかな。
今は噛まれた部分がものすごく腫れていて……
君は、とても小さいけれど、医療関係者なの?」
「医療関係者というほどの者ではありません。
特に公的な資格も何も持っていませんし……」
「でも、一般の人に比べたら、その辺りの医療事情については詳しそうだよね。
医者か、その関連者が見つかるまで、とりあえず一緒に来てくれないかな」
頼むというより、その人はすでに私の腕を強く引っ張っていた。
「待ちなさいよ、ゼーリア。その子は訳ありなの。
アデル様に関わらせるにしても、色々事情があって……」
「アデル様以上の事情があるとでも言うのか!」
「少し状況が違うのよ。
ねえ、コ、じゃなくてルディ、今回の患者は、あなたと同様、訳があって世間からは隔離されていて、公の医療を受ける事ができないの。
もちろんあなたのできる範囲で構わないので、その子を診てやってくれないかしら」
「私、ハイル先生に、勝手に治療のたぐいをする事を禁じられているんです。
多少の看病くらいなら、できるかもしれないですけれど」
「それでもいいから、早く!」
ゼーリアは、私の腕を引っ張って、すでに家から連れ出そうとしていた。
ノーリアは、「ちょっと待ちなさいよ」と言うと、同行の準備をはじめる。
「ノーリア、ゼーリア、俺は仲間と合流するために、もう出発しなければならない。
これだけは忠告しておくが、アデル様の治療の目処がついたら、すぐに
絶対にハッサンにだけは、関わらせるんじゃないぞ」
「分かったわ。治療の目処がついたら、すぐに紹介されている場所に向かわせるようにするわ」
そうして、私とアンバルは最後の別れをする事となった。私の目がまた潤んでくる。
「師匠、どうか、どうか、道中ご無事でお過ごし下さいね」
「ああ、お前も元気でな。できるだけ、危ない事には、首を突っ込むんじゃないぞ。自分の身を守る事だけを考えろ」
アンバルは、私の頭を優しくすっと撫でると、風のように身軽に部屋を出て行った。
私とノーリア、その弟のゼーリアは、飛行車に、飛び乗り目的地に、向かう。
移動中、私はできるだけ情報収集に努めたが、動転しているのか、ゼーリアから有効な情報を聞き出すのはかなり難しかった。
何とか、年齢、性別、受傷時間やその後の対応、経過について問いただしていく。
「結局、噛まれたのは何時頃なんですか?
どんな蛇だったんですか。
毒の抗体薬と抗アレルギー薬の投与後の手当てはどこまでやったんでしょう?」
「早朝の散歩の途中の休憩で、岩場に座った時に、何かがいたみたいなんだよ。
茶色でそこそこでかい、渦巻きの斑のある蛇だったのでまむしかな。
右足を噛まれたみたいで、急いで、背負って連れて帰ったんだけど。
一応住んでいるのが森の中なんで、ポイズンリムーバーは常備してるし、噛まれた場所は分かる範囲で毒を吸い出して、水で洗っている。
でも、痛み止めもあまり効かないし、何といっても苦しそうで、意識ももうろうとしてきたんだ」
「息が苦しそうで、ゼーゼーヒューヒュー呼吸をしたりとかいった症状はないですか?」
「それは今の所、なさそうかな」
飛行車が到着した場所は、森の奥の入り組んだ場所にある一軒の民家だった。家の背後には岩壁がある。
家の奥の隠し扉のような所から、さらに奥に進むと、周囲を岩に囲まれた、小さな部屋にたどり着いた。
その部屋のベッドには、私と同年代くらいの、青い顔をした、小柄な男の子が眠っていた。
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