―42― ニーニャちゃん、おかわり
「それでは今から転移いたしますわ」
鉱石の採掘ある程度済ませたあと、転移の準備を済ませたネネリがそう口にした。
ニーニャやヴァラクはもっと採掘をしたいと主張した。
というのもまだ壁に埋まっている鉱石が数多く残っていたからだ。
それをネネリはまた後日来て採掘すればいい、と一蹴する。
実際、他の冒険者が陥没穴の底まで来て横取りするなんてことはそう起こらないだろうし、また後日ゆっくり採掘すればよかった。
アイテムボックスに
「
すると魔法陣が現れ、ふとした瞬間には穴の上まで移動していた。
「せっかく転移するなら、街のほうまで転移したほうが楽じゃない!」
とヴァラクが抗議をする。
「そんな便利な魔法ではありませんの。わがまま言わないでくださいまし」
とネネリが反論した。
転移は上級魔法だし様々な制約があるのだろう。
それからは歩いて街まで戻った。
◆
「それじぁ、かんぱ~い!」
戻ると早速、皆でお祝いをするためにレストランでご馳走となった。
もちろんネルも一緒だ。
「ふわーっ、どれもおいしいですね~。もっと注文してもいいですかね?」
「ニーニャ、どんどん注文していいわよ! なにせヴァラクちゃんたちは超大金持ちなんだから! ふはははははっ」
「あの、お2人とも。ここは高級なレストランなんですから、もう少しお静かにしてくださいまし」
「……おいしい」
大量を鉱石の採掘に成功したので、せっかくだし街一番の高級店に4人は来ていた。
「それでネル、これからどうすんのよ」
食事がそろそろ終盤になりそうってとき。
ふと、隣にいるヴァラクがそう話しかけてきた。
「というかさー、私たちのパーティーに入ったらいいじゃん!」
自分がこのパーティーに入る? そんなの無理に決まっている。
なぜならニーニャが反対する。
「そうですね。ネルちゃんがこのパーティーに入ってくれたらもっと楽しくなりそうです!」
と、ニーニャが言った。
おかしい。なぜかニーニャが賛成した。
「ニーニャもこう言っていることだし、いいでしょネル! ふふんっ、ヴァラクちゃんとネルは共に死線を乗り越えた仲だから相性もばっちりだと思うんだよね!」
「まぁ、わたくしはお二人が賛成なら全く構いませんが」
「ならヴァラクちゃん大賛成~!」
「わたしも賛成です!」
すると意見が合ったヴァラクとニーニャが立ち上がって「イェィ!」とお互いに手を叩いていた。
なんだか外堀が勝手に埋められているような気がする。
「待って!」
ネルは慌てて立ち上がった。
ネルが神妙な面持ちをしていたせいだろう、場にピリッとした空気が流れる。
「私はあなた方と共に行動することはできない」
まず、はっきりと否定する。
「なんでですか?」
と、ニーニャが悲しげな顔でこっちを見ていた。
なんで、よりによってニーニャがそんな顔をするのだろうか。
忘れたのだろうか。自分がニーニャにしたことを。
「忘れたの? 私がニーニャにしたことを」
「お、覚えています。けど、もう過去のことですし」
「そうよ、ニーニャがそう言ってるんだし。別に気にする必要ないじゃない」
ヴァラクがそう言うが、事情を知らないからそんなことを言えるのだろう。
それに、ネルが彼女たちと行動できないのにはもう一つ理由がある。
【灰色の旅団】は脱退を許さない。
もし、勝手に【灰色の旅団】から抜けて他の冒険者たちと行動するようになったら追われること間違いなしだ。
「ねぇ、ニーニャ。話してもいい?」
「えっ」
ニーニャは一瞬驚きつつも、
「うん、いいよ」
と、頷いてくれた。
「二人には話がある。私とニーニャの過去について――」
話してしまえば、二人は自分のことを軽蔑するだろう。
けれど、ネルはそれでいいと思った。
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