―12― ニーニャちゃん、指輪の能力を知る

 森の奥に行けばもっと強い魔物に出会えるってことで、ニーニャとネネリは奥へと向かっていた。


 ネネリの当初の予定としてはFランクの魔物だけ狩って終わりにしようと考えていたが、ニーニャの【バフ】が強力だと知れたので最深部に行っても問題ないだろうという判断だった。


「いましたわねっ」


 目の前に巨大蟻ジャイアント・アントの群れがあった。


「魔術強化【バフ・改】」


 と、一度ニーニャが【バフ】させてから、


火炎弾バラデラマ!」


 と、ネネリが詠唱する。

 すると数十体いた巨大蟻ジャイアント・アント全てが炎に巻き込まれる。


「これなら素材回収できそうですよ!」


 ニーニャが死骸となった巨大蟻ジャイアント・アントを見てそう言った。

 巨大蟻ジャイアント・アントは通常の魔物に比べて炎に耐性があるため、まだ原型が保たれていた。


「ですが、これだけの数一度に運べませんわね」


 袋は持ってきておるが、流石に全ては運べない。

 一度戻って荷台でも借りてくるべきか。


「うーん、せっかく討伐したのに……」


 ニーニャは残念そうにうなだれる。


 ふと、そんなとき指輪が光った気がした。

 気のせいだろうか? と思ってニーニャが指輪を見たとき。


 指輪が箱の形状に変化したのだ。


「せっかく気に入っていたのに!」


 かわいい指輪が変な箱になったのだ。ニーニャは憤慨する。


「に、ニーニャ……そ、それ、まさかアイテムボックスではありませんの……?」


 なぜか、ネネリがひどく狼狽した様子だった。


「アイテムボックスですか?」


 なんだろうそれは? 聞いたことがない。


「アイテムボックスを知りませんの!?」


 ネネリ曰く、アイテムボックスとはどんなアイテムも収納できる魔法のアイテムのことだとか。

 ダンジョンの最奥にあると噂され、それを求めて数ある冒険者が探し求めているんだとか。


「そんなすごいアイテムなわけがないですよ。これ、偶然見つけたものなので」


 目が覚めたらいた部屋に、偶然あった宝箱に入っていた指輪だ。

 そんな指輪がすごいアイテムなわけがないのだ。


「まぁ、そうですわ……。そんなすごいのが簡単に手に入るわけありませんものね。ですが、可能性もなくはないので、試しに入れてみましょうか」


 ネネリは巨大蟻ジャイアント・アントの死骸を持って、箱に入れてみる。

 すると、死骸は箱に吸い込まれるようにして消えていった。


「ま、まだ、アイテムボックスだと決まったわけではありませんわよね!」


 言いながらネネリは次々と死骸を箱に入れていく。

 最終的に全ての死骸が消えてしまった。


「ま、まだ……アイテムボックスと決まったわけではありませんわね……アイテムボックスでしたら、収納したのを取り出せないといけませんものよね……」


 ネネリは震えた声でそう言った。


「そうなりますよね……」


 ニーニャは頷きながら箱に向かって念じる。

 すると、さっき吸い込まれていった巨大蟻ジャイアント・アントの死骸が外に放り出されていった。


 ニーニャの持っていた指輪がアイテムボックスだと確定した。


「あ、あなた……っ、アイテムボックスをどこで手に入れましたの!」


 ネネリはニーニャを揺さぶりながら問いただす。


「で、ですからっ、ダンジョンで偶然見つけた宝箱に入っていたんです。わたしもこれがアイテムボックスだって今知ったぐらいですし……」

「ダンジョンに入ったことがあるのですね……。ちなみにダンジョンのどの辺りで見つけたんですの?」

「えっと、弱い魔物しかいなかったので上層ですね」

「そ、そうですの……。いくらなんでもニーニャ一人でダンジョン攻略なんてできるわけありませんものね」

「あははっ、そんなことできるわけないじゃないですかー」

「そ、そうですわね」


 ひとまずネネリは納得した。

 ダンジョンの上層でアイテムボックスが手に入るなんて偶然あるんですわね、という具合に。


「と、ともかくアイテムボックスがあるなら活用しない手はありませんわね」


 そんなわけで一度出してしまった巨大蟻ジャイアント・アントの死骸をアイテムボックスに入れていく。


 ニーニャが念じればアイテムボックスは箱の形状から指輪に戻る。

 気に入っている指輪に戻ってくれてほっとするニーニャだった。


「まだ余裕ありますし、もっと奥に行きましょうか」


 そういうわけでニーニャとネネリはさらに森の最深部に向かう。


人喰鬼オーガがいますわね」


 ふと、ネネリが足を止めた。

 人喰鬼オーガはDランク。今の自分たちではまだ早いか。


「見つからないように、静かに撤退しますわよ」

「え? なんでですか?」

人喰鬼オーガは今のわたくしたちではまだ早いですわ」

「え? わたし人喰鬼オーガ倒したことありますよ。人喰鬼オーガって初心者でも倒せる魔物ですよね」

「いえ、決してそんなことは……」


 人喰鬼オーガを倒せたら冒険者としてDランク相当に値する。

 冒険者はDランクになれば初心者卒業という風潮があるため、人喰鬼オーガは冒険者にとって1つの登龍門とされている。


 だから初心者の冒険者は人喰鬼オーガを倒すのは1つの目標と据えることが多い。

 それでも人喰鬼オーガ相手なら最低4人以上のパーティーを組んで戦うので普通だ。

 今は2人しかいない。


「どっちにしろネネリさんのすごい魔法なら一撃じゃないですかっ!」

「まぁ、それもそうですわね……」


 そんなわけで魔法唱えてみる。


火炎弾バラデラマ!」


 確かに人喰鬼オーガは一撃で死んだ。


 それから人喰鬼オーガの死骸をアイテムボックスに収納する。


「十分魔物の回収もできましたし、今日はこの辺で帰りましょうか」


 というネネリの提案の元に2人はギルドに戻ることにした。

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