―03― ニーニャちゃん、進化する
――スキル【バフ】がレベル99になりました。カンストしましたので、スキルが進化します。
(天の声だ。初めて聞いたな……)
と、ニーニャは考えていた。
スキルを獲得したさい、天の声が聞こえると以前誰かから教えてもらったことがあった。
今までニーニャはスキルを獲得した経験がないので、天の声は聞いたことがなかった。
それに、自分のスキルが使えば使うほど成長するのは知っていたが、まさかレベルの概念があったとは。
それは知らなかった。
他の冒険者は知っていたのだろうか?
レベル99とカンストした件に関しては驚きはしなかった。
あれだけ四六時中スキルを使っていたのだ。
そりゃ、カンストするよね。
――スキル【バフ】は【バフ・改】へと進化しました。
ボンヤリとニーニャは天の声を聞いていた。
――【バフ・改】に進化したことにより、自分に【バフ】ができない制限を解除しました。
(あ、自分にも【バフ】できるようになったんだ……)
もう少し早く【バフ・改】に進化していたら、もっとクランに貢献できたのかなぁ、とか考える。
(あれ? 頭痛が少し良くなっている)
なんでだろう? と疑問に思う。
ふと、ニーニャは今、誰にも【バフ】をかけていないことに気がつく。
恐らく進化したことで、かけていた【バフ】が消えたのだろう。
頭痛の原因はクラン全員を【バフ】するという苦行をしていたからだったんだ。
ニーニャはクランのメンバーをできる限り多く【バフ】しないといけないという強迫観念に常に囚われていた。
おかげで無意識下でニーニャはクラン全員を【バフ】していた。
頭痛が和らいでくるにつれ、少しずつ失っていた思考力を取り戻していく。
(そうだ、わたしこのままだと食べられてしまうんだ……)
(試しに使ってみよう)
と、ニーニャは思いながら立ち上がる。
「全ステータス【バフ・改】」
力が湧き上がってくるのを感じる。
けど、この使い方、冷静に考えたら非効率的だ。必要のない能力値まで【バフ】させている。
「解除。物理攻撃力【バフ・改】」
一度、全ステータス【バフ・改】を解除してから、攻撃力のみに【バフ・改】をかけ直す。
「ぐぎゃぁああああああああああああ!!」
その脳天に狙いを定めて――
「えいっ!」
と、拳を繰り出す。
ドゴンッ、と
「意外と効いている……?」
吹き飛んだ
「もしかして、弱い……?」
自分が強いという発想はなかった。
なぜならニーニャは無能という言葉を浴びせられながら育ってきたから。ゆえにニーニャは自己評価が低い。
「「ぐるぅうううううううう!!」」
どうやら
それらが一斉に襲いかかる。
「物理攻撃力【バフ・改】」
言いながらパンチを繰り出す。
殴られた
「やっぱり弱い」
次々とニーニャはパンチを繰り出す。
「あっ」
ふと、気がついたときには背中に
攻撃されたニーニャは盛大に吹き飛ぶ。
「うげっ!」
壁に当たったニーニャは変な声をあげて倒れた。
「自然治癒能力【バフ・改】」
そう言うと、傷が塞がっていく。
これは便利な使い方だなぁ、とニーニャは呑気に思う。
「攻撃にばかり集中していた。ちょっと反省」
まだ、何体もの
「俊敏さ【バフ・改】、物理攻撃力【バフ・改】」
次は攻撃力だけでなく、俊敏さにも【バフ・改】をかける。
すると、目にも止まらぬ速さで移動が可能となった。
そして、次々と
「おー、全滅した」
目の前には複数の
「やっぱり弱い魔物だったんだ」
見た目は強そうなのに。不思議である。
「あっ、いつの間にか頭痛も治っている」
これでやっと考えごとにも集中できそうだ。
「んー、これからどうしようか?」
と、ニーニャはダンジョン下層で頭を悩ませることにした。
◆
ニーニャの【バフ】には、もう一つ大きな秘密があった。
通常のバフ、例えば、全体攻撃力アップ・小(パーティ全体の攻撃力1.1倍)とかの場合、攻撃をアップさせる対象が何人いても1.1倍には変わりがない。
パーティが2人の場合は自分を除いた1人の攻撃力が1.1倍になるし、パーティが3人の場合は自分を除いた2人の攻撃力が1.1倍になる。
そうやって、パーティが4人になろうが5人になろうが1.1倍という数値には変化はない。
けれど、ニーニャの【バフ】はそうではなかった。
ニーニャの【バフ】は対象が増えれば増えるほど効果が減少していく。
ニーニャの【バフ】は言うなれば巨大なパウンドケーキを皆で分け当たるような感じだ。
今、ニーニャはクラン全員を【バフ】することをやめた。
そして、自分一人だけを【バフ】の対象にした。
さきほどパウンドケーキで例えたが、今まで皆で分け合っていたパウンドケーキをこれからは独り占めできるようになったのである。
レベルカンストし【バフ・改】となったのを独り占めした場合、なにが起きるのか?
最強の誕生である。
とはいえ、そのことをニーニャ自身が知るのはもっと先のことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます