流れ星に

[『流れ星に願い事をすれば叶う』って言い伝え、この世界にはあるのか?]

 昨夜の流星群の記録を蝋板から羊皮紙に写す作業をしているサシャの引き結ばれた唇を見上げながら、ふと脳裏を過った質問をそのまま言葉にする。

「流れ星には、願わないよ」

 唐突なトールの質問に、サシャはペンを止め、小さく首を傾げた。

 トールが「本」として転生してきたこの世界の主神は、北を指し示す三つ星。その三つ星以外のものに願を掛けることは、してはならないことなのだろう。一方、トールは、……絶対に叶ってはいけない願いごとを、流れ星にした覚えがある。苦い思いを飲み下すと、トールは、再びペンを動かし始めたサシャの小さな手に視線を戻した。

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