洗濯好きの理由

 揺れる洗濯物の向こうに見えたのは、普段通りの白い影。盥の側にしゃがんでいるその影に向かって呼びかけるギリギリで、トールは自分の声を喉にしまった。目の前の影は確かに、サシャに似ている。だが、サシャよりも少し儚げ。

 はたと、目を覚ます。

 視界に映ったのは、整然と干された洗濯物の海と、『本』であるトールを抱き締め、疲れた顔で午睡を取るサシャの細い腕。

 サシャが洗濯好きな理由は、サシャの母が洗濯をするのを見ていたからだろう。先程の夢からそう結論づける。トールも、父と母を見ていて自然と本を読むようになった。小野寺と伊藤が楽しそうだからサッカーが好きになった。眠気に負け、トールは再び幻の瞼を閉じた。

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