自身を構成するもの

 表紙は、やはり鞣し革で板を包んだものになるのだろうか? 固定されたかがり台から、製本師カレヴァの臨時の作業部屋をぐるりと見回す。薄く削られた板と、様々な色を見せる革の置かれ方が乱雑なのは、カレヴァが急遽帝都に呼び戻されたからだろう。

 トールの世界では、本の表紙は、植物の繊維を漉いて作成された『紙』から作られていた。中身も。幻の瞳に映る、僅かに黄色みを帯びた羊皮紙に小さく唸る。この世界では『祈祷書』として認識されているトールを構成する紙は、おそらく羊皮紙だとは思うが、どうも違和感がある。サシャが元気になったら一緒に調べてみるのも良いかもしれない。幻の口からふわりと漏れた欠伸に、トールは気怠く頷いた。

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