水面に映るものは

 水面に映る顔は、まだ少し蒼白いサシャの顔。何度見返してもやはり、トールは、黒茶の革表紙の『本』。

[生き物、いそうにないな]

 心の震えを、ここに来た目的で逸らす。

「うん」

 水は、透明で綺麗にみえるけど。首を傾げる水面のサシャに、トールは水に溶ける、公害を引き起こす物質のことを教えた。




 水面に映る顔は、普段通りに蒼白い自分の顔。

 それ以外のものは、葉っぱの欠片すら、水面には見えない。水面の向こうの、水の中にも。

 魚や、他の生き物がいないということは、やはり、この川の水の中には「毒」が入っているのだろう。確かめなければ。自分の顔に頷くと、サシャは、川上を見つめた。

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