縫い終わった鞄に
「……できた」
エプロンと同じ色の鞄を胸の高さに持ち上げるサシャの頬の赤さに、トールの唇も綻ぶ。
この鞄は、学業に必要なものを持ち運ぶために、サシャの叔父ユーグが績み織った麻布でサシャが丁寧に縫ったもの。当然、普段はエプロンの胸ポケットに収まってサシャと一緒に過ごしているトールも、この鞄の中に引っ越すことになるのだろう。石板や鉄筆を丁寧に鞄に収めるサシャの手に、トールは一抹の淋しさを覚えた。
そのトールを、サシャが掴む。
一呼吸で、『本』であるトールの身体は、サシャのエプロンの胸ポケットに収まっていた。
戸惑いつつ、サシャを見上げる。
トールを見下ろし、微笑んだサシャに、トールは小さく頷いてみせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。