歌を歌うには
「Ut……、Re……、Mi……」
木陰に座り、持っていた羊皮紙を広げたサシャの沈んだ紅い瞳に、息を吐く。
「これ、この前聴いた感じだともう少し高い音、だった……」
羊皮紙に書かれているのは、先程サシャが写した、この世界の『楽譜』。歌詞と、その上に記された、僅かな高低で音の高さを示した四角い点だけが見えるもの。
拍子すら分からないのに、これだけで、歌うことができるのだろうか? 自分の声に四苦八苦するサシャに、同情する。トール自身も、音楽の成績は期末試験だけで何とかしていた人だから、サシャにアドバイスをすることは、無理。見守ることしか、できない。小さな声を出し続けるサシャに、トールは小さな唸り声を上げた。
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