『電灯』の無い場所
北の窓から入ってくる光が、静かに薄れてゆく。
[もうそろそろ、帰る時間じゃないのか?]
書見台に乗せた分厚い本を丁寧に読み解いているサシャに、『本』に転生中のトールは定位置であるサシャのエプロンの胸元ポケットから声を掛けた。
「うん」
窓の外を確かめたサシャが、名残惜しそうに本を閉じる。
講義や本から得た知識や論理を、議論によって深めていく。これが、この世界における『学習』の方法。人と議論することが苦手なサシャは、その弱点を本を読むことで補おうとしている。
この世界にも『電気』があれば良いのに。サシャの胸元で唇を噛む。『電灯』があれば、もっと本を読むことができるのに。叶わぬ願いに、トールは首を横に振った。
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