夢の向こう

 瞳を刺す鋭い光に、跳ね起きる。

 視界に入るのは、普段通りの優しい闇。サシャを害するものは、いない。

[大丈夫か?]

 ほっと息を吐き、毛布の間に身を横たえたサシャの右側にある小さな本の表紙が、僅かに光る。心配する文字に首を横に振ると、サシャはそっと、トールという名の小さな『魔導書』を抱き締めた。

 壁一面が硝子でできた四角い建物、硬く滑らかな道を物凄い速さで走り回る物体、何でできているのか分からない美味しそうな食べ物。トールを抱いて眠ると見る、「トールの世界」の夢は、サシャにとっては不思議なことばかり。でも、……いつか、トールと一緒にその場所へ行ってみたい。再び目を閉じる前に、サシャは小さく微笑んだ。

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