故郷とは異なる雪の降る場所で

 音も無く、ただただ白く降り積もる雪を、サシャが羽織るマントの隙間から見つめる。

 雷鳴、窓硝子を強く叩く氷の音。トールが知っている雪は、音を立てて降るもの。しかしこの場所では。サシャが着ているエプロンの胸元に位置するポケットの中で、トールは無意識に首を横に振っていた。

「吹雪の日は、風の音がするよ」

 何の因果か『本』に転生してしまったトールの背に浮かんだ思考を読み取ったサシャが、木々の間で凍る地面を確認しながら呟く。

 転生前に暮らしていた町では、無音の雪は、生活が麻痺する大雪を意味した。しかしこの場所では、雪は軽く、どかっと積もることはなさそうだ。何が、違うのだろう? 視界の白に、トールは小さく唸った。

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