第9話 設立

どうやら美人を怒らせってしまったらしい。

ムカついているような表情をしていても、ドラマの中の女優さんを見ているようで不快感はなかった。



「あ、あんたたちは何してるのよ」


髪をかき上げ、こちらに睨みをきかせる。


「えっと、同好会を設立しようと思って先生に顧問を頼んでました」


「へー」


相槌を打ち、少し離れていた距離を縮めてきた美人。

そして私の肩に手を置き、反対側の耳元で


「人数は足りてるの?」


と小声で私に問うのだった。

近くで香る美人の香水にドキドキが止まらない。




「陽菜ー?」


飛鳥が私を探して廊下に出てきたようだった。



「ちょっ、なにしてんだよ」


咄嗟に手首を掴まれふわりと後ろに引っ張られる。

焦る飛鳥の表情が視界に入った。


「飛鳥?」


「あっ、悪い」


掴まれた手首が解放し、すぐに美人を威嚇し始める飛鳥。



「同好会のことを聞いてただけだけど?」


こたえを聞いた飛鳥は安心したらしく威嚇をやめ


「ごめん、勘違いしちゃって」


素直に謝る飛鳥。



「へー。でも私、あんたの態度に傷付いたから同好会いれてくれない?」


へ?

なんで?



「どうしたんですか? 廊下で集まって」


教室でひとりにされた花凛ちゃんも気になって廊下に姿を現す。


「か、楪」


ぼそっと花凛ちゃんの名前を呟いて一歩下がる美人。

少し頬が赤く染まるのがわかった。

なるほど、花凛ちゃんのファンで同じ同好会に入りたかったのなら納得。


「この子が相談同好会に入りたいみたいだよ」


飛鳥が説明すると、花凛ちゃんが美人のほうに歩みを進める。



「……」


少し間を置いたあと優しい笑顔で迎え入れたのだった。


「これから一緒によろしくお願いします」



✳︎ ✳︎ ✳︎


芽依先生が申請書を持って戻ってきたので早速記入をする花凛ちゃん。


「あとはメンバーの記入ですね」


と自分の名前を書き隣の飛鳥に紙を回す。


「花凛、字うま」


飛鳥から回ってきた紙を見ると、硬筆の教科書のような字で花凛ちゃんの名前が書かれていた。

飛鳥は丸文字。中学まではもっと大胆な字を書いていたのに。


美人に紙を渡す。



「とよなが みこと?」


書いた名前を読み上げる。

豊永 美琴。

たしか隣のクラスにクールで美人な子がいるという噂でこの名前を聞いた。


噂の子をこんな早く拝めるなんて。



美人に囲まれて私は前世でどんな徳を積んだんだろう。

前世の私ありがとう。


こうして美人だらけの同好会が今日、設立されたのだった。

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