第7話 約束

「部活はーー」


そう一言呟いて困ったような表情をする花凛ちゃん。


「お待たせいたしました」


花凛ちゃんに助け舟を出すようなタイミングで店員さんが注文したものを運んできてくれた。


そして店員さんが去っていくと砂糖を入れたホットティーを一口飲み小さな音を立ててカップを置き私と飛鳥に目線を戻した。



「まだ決めてないんです」


「でも体験入部もしてなかったみたいだけど」


「えぇ。大人数で賑やかなのが少々苦手でして、それなら自分で作ってしまえばと思ったのですが……」



「なるほどね。それで活動内容悩んでるんだ」



「そう! それで3人で相談しようと思ってここで待っててもらったの」


飛鳥が半ば無理矢理ここに私を連れてきたわけをさらっと話す。



なるほどねーー。



✳︎ ✳︎ ✳︎



「じゃあ、意見をまとめると “人数が必要な運動部はバツ” “既存の部活もバツ” “人の役に立てる活動” “ゆるい活動” “学校の恋愛事情把握したい” こんな感じ?」


丸文字で書かれたメモを読み上げる飛鳥。

そして鞄をごそごそして


「それで今ある部活と同好会がこれ」


と部活動、同好会がずらっと書き連ねられたA4の用紙を真ん中に出す。



「うわ、結構多いんだね」


「友達同士で同好会作ってる生徒は多いからね」


「なんだか私のわがままに付き合ってもらって申し訳ないです」


しょんぼりする花凛ちゃん可愛い。


「全然だよ。こうやって花凛ちゃんと飛鳥と考えるの楽しいよ! 私こそどさくさに紛れて一緒の部活に入ろうとしてるけどいいのかな」


今更ながら今日初めて話す私なんかも部活に入れてもらえるのか不安になる。



「陽菜さんのことは飛鳥さんからいろいろお話聞いていて一緒に活動できたらときっと楽しいと考えていたので、ご一緒していただければ嬉しいです」


花凛ちゃんいい子……。

飛鳥にふと視線を移すと目が合い頷く飛鳥。

花凛ちゃんのほうに向き直しありがたいお言葉への返事をする。


「わっ、私の方こそお願いします!」



✳︎ ✳︎ ✳︎


しばらく活動のことは保留にし、幼い頃の私の話を飛鳥がしていて一区切りつくと花凛ちゃんの幼い頃の話を聞こうと話を振っていた。


「私の幼少期はそうですね、小学校に行くまでは外にあまり出なかったので友達がいなかったのですが、父の仕事の関係で来ていた方が同い年の女の子を連れてきて何度か遊んだのが思い出ですね」


「学校に通い始めてもお友達は出来なかったのでその子が高校に入るまでの最初で最後のお友達でした。ただ幼すぎたせいか顔をあまり覚えていないのがとても残念で……」



花凛ちゃんの百合相手はもう決まってる!?


「その子となんか約束とかした?」


「約束……ですか?」


手で口元を隠すようにしお淑やかに考え始めた。


「最後の別れ際に、また会ったらお友達になろうという約束をして指輪を渡されました」



「指輪!?」


勢いで立ち上がり飛鳥のほうを見る。


「陽菜、落ち着いて」


ほんの少し冷静さを取り戻し椅子に座り直すのだった。

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