第6話 部活動
身体測定から数日経ち、なんとなくクラス内でのグループが出来てあがっていた。
「今日から部活動の体験入部が始まります。部活動への入部は皆さん必須ですので、しっかり見学してくださいね」
HRはお終いです。と付け加え丁寧なお辞儀をし眼鏡を正して先生が教室から出て行った。
「陽菜ー。部活強制なんだねー」
先生の姿が見えなくなりすぐに駆け寄ってくる飛鳥。
「無断でアルバイトする人増えないようにでしょ。飛鳥はどこ見るの?」
私の机に両手を乗せ、顔を乗り出してくる。
「それが全然決まってないのー。陽菜は?」
「ふっふっふっ。私はもう決まっています」
想像しただけで勝手に笑みが溢れてしまう。
どこの部活か問われ、飛鳥に耳打ちをする。
私が飛鳥から離れると耳打ちしたほうの耳を手で触りながら
「なるほどねー。私も付き合うよ」
と、予想通りの展開に持っていってくれた。
感謝をピースサインで表し、飛鳥に向ける。
「あ! 行こっか、飛鳥」
急いでカバンを手に持ち立ち上がる。
飛鳥の腕を掴み、教室を後にした。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「さて、どこの部活に行くのかな」
私たちは教室を出てある人物を追っていた。
可憐に歩く姿はまるで百合。すれ違う人は皆、彼女をもう一度見ようと振り返る。金色の髪、細身のスタイル、金糸雀のような美声、彼女は正真正銘の美少女だ。
一眼見た時から気になっていた。
絶対に女子からの人気も高い。ということは、百合に発展する可能性も高い。
彼女の周りでの百合が見たい。仲良くなりたい。
そんな気持ちから彼女と同じ部活に入ることを決めたのだ。
外履に履き替えるのを隠れながら見張り、外に出るのを確認し私たちも急いで履き替える。
運動部を見るのかな。
お淑やかな仕草から勝手に文化部だと思っていたが、でも運動してる姿も様になりそう。
昇降口で勝手な妄想をしていると彼女は正門のほうをまで歩いていた。
「え? 門出ちゃうよ?」
動かない私を静かに見守っていた飛鳥に声をかけると、すぐに飛鳥も反応して正門のほうに目を向ける。
「ほんとだ!」
飛鳥も驚いた様子だったがすぐに冷静さを取り戻す。
「体験入部初日だし、焦らなくてももう決まってるのかもだよ」
「え、もし決まってたら体験しない可能性もあるじゃん。そしたらどこ入るかわからなくない?」
「大丈夫だよ」
飛鳥の謎の自信に疑問を覚えたが、その日は私たちもすぐに帰宅することにした。
そして毎日、放課後に目標を追うが体験入部をする様子は一切なかったのだ。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「体験入部あと3日だよ?」
一向に動きのターゲットに不安を隠せずにいた。
「今日一緒にカフェでも行こっ」
「聞いてた? あと3日だよ?」
「焦ってもしかたないって」
飛鳥がウィンクしながら私を宥める。
可愛い飛鳥とお茶でもするか。
以前飛鳥と行った和カフェなごみに再チャレンジとなった。
抹茶ラテ全然味わえてないから今度こそしっかりと味わおうと意気込む。
校舎から外へ出ると、桜の花は散り落ち茶色くなった花びらが地面に残っていた。
わずかに木にしがみついていた花びらも今日の春風で攫っていかれたようだった。
強い風が吹く中、スカートを押さえるのに必死になる。
ふと飛鳥を見ると一応同じように押さえていた。
「飛鳥もスカート押さえるんだ」
漏れた声が飛鳥に届き、まあねと口角を上げていた。
気になることはあるが、聞かないでおこう。
向かい風に立ち向かいながら和カフェなごみを目指すのだった。
✳︎ ✳︎ ✳︎
ベルの音を鳴らしお店の扉をあける飛鳥。
中に入り風でボサボサになった髪を手で整える。
「花凛っ!」
席への案内を待っていると飛鳥が座っていた子に声をかけていた。
走り寄っていく飛鳥の後を着いていく。
「えっ? 楪さん?」
持っていたティーカップを置き、金色の髪を耳にかけこちらに視線を向けるその人はクラスメイトの楪 花凛だった。
私たちがターゲットにしていた美少女だ。
「え、花凛って? 飛鳥、楪さんに馴れ馴れしいよ」
遠目ではずっと見てきたが話すのは初めてなのにファーストネーム呼びなんて恐れ多い。
「花凛とは友達だもん! ねっ、ここ座るね」
まさかの楪さんと相席になってしまった。
「いやいやいや……。 友達? いつから?」
「先週から」
「どういうこと」
「ご注文お決まりでしょうか」
タイミング悪く店員さんが来てしまう。
飛鳥より先に注文を伝え、飛鳥が注文を終えるのを睨みをきかせて待っていた。
「えーっとね」
店員さんが去っていき、説明を始める飛鳥。
どうやら私が楪さんをターゲットにするのを見越して毎日少しずつ話しかけていたらしい。
この店にはよく来ると聞いて今日、私を連れてきたらビンゴだったようで、私と楪さんを会わせるのに成功したそうだ。
「なんで早く教えてくれなかったの」
「えへへー。サプライズだよ」
ぺろっと舌を出す仕草に許さざるを得なくなってしまう。
「楪さん、私片瀬陽菜って言うの。楪さんとは仲良くなりたくて……」
頭を下げ自己紹介をし、楪さんをちらっと見ると女神のような笑顔が目に入った。
「陽菜さん、お気持ち嬉しいです。ぜひ花凛と呼んでください」
握手を求める手を差し出され、震える手で花凛ちゃんの手を握った。
あぁ、これだよ。
ふんわりすべすべの手。長い指が私の手を包む。いつまでも握っていたくなる。
「はいっ! 陽菜は花凛に聞きたいことあるんでしょ」
飛鳥に無理やり花凛ちゃんとの握手を引き離される。
名残惜しいがしかたない。
握ったほうの手をさりげなく顔に近づける。
予想通りなんだかいい匂いがする。
石鹸のような清潔感のある匂いだった。
友達になったということは、後々は花凛ちゃんの髪を結ってあげたりとかもできるのかな。夢が広がる。
「陽菜っ!」
「あっ、ごめん。花凛ちゃんは部活どうするの?」
危うく夢の中で気絶するところだった。
寸前のところで飛鳥に呼び戻された。
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