第3話 反省
家に帰ってから飛鳥にしてしまったことに対し、猛烈に反省した。
ひどいことをした。
飛鳥の性別なんて気にしてないのに、飛鳥が男だからとか女だからとかそんなのなにも関係ないと思ってたのに、見た目と体の作りのギャップに驚いて咄嗟にあんなこと……。
どうしよう。
飛鳥へのメッセージを書いては消してを3時間ほど繰り返していた。
ピロン
小さい音と共に手に伝わる振動。
驚きのあまりスマートフォンを投げ出してしまい、ぎりぎりのところで軌道修正させ真上に浮いていく。
宙を舞うスマートフォンをまるで暴れる魚を捕まえたときのように左右の手を行き来させながら無事にキャッチすることに成功する。
ゆっくりと画面を確認すると、やはり飛鳥からだった。
メッセージを開く。
『今日は驚かせちゃったかな。ごめんね。俺は今日楽しかったから陽菜がよければまた遊びに行こうね』
謝らせちゃった……。
飛鳥の手、触ったの初めてじゃないのにあんなに驚いて傷付けちゃったよね。
『私のがごめんね。また可愛い飛鳥と遊びに行きたい』
返事これで大丈夫かな。
“手が男”なんて女装してる飛鳥を否定するようなこと言っちゃって、可愛い飛鳥も好きなのに。
ごめんね、飛鳥。
✳︎ ✳︎ ✳︎
メッセージは飛鳥の“ありがとう”といううさぎのスタンプで終了した。
翌朝、いつもより少し早く家を出て飛鳥の家の前で待ち伏せる。
すぐに玄関の扉が開く音がして目を向けると、可愛らしい飛鳥が立っていた。
その女装姿を確認してほっと胸を撫で下ろす。
「どうしたの?」
一緒に登校する時はいつもの待ち合わせ場所があるため、玄関先にいる私を見てぽかんとする飛鳥。
「昨日は、ごめんなさい」
頭を深く下げ、昨夜の脳内反省会を思い出す。
飛鳥を傷つけてしまったことは今までにも何度かあった。
でも今回は飛鳥がどんな想いでその恰好をしているのか理解もしていないのに否定するようなことを言ってしまった。
飛鳥がどれだけ傷ついたのかも理解できないけど、いつもよりもより真剣に頭を下げた。
下げていた頭に何かが乗っかった。
飛鳥の手だ。
ぽんぽんと軽く頭を撫でられ、
「頭、あげて」
ゆっくり元の体勢に戻ろうとする途中、微笑んだ表情で顔覗き込む飛鳥が見えた。
「ほんとに全然気にしてないから!」
ねっ! と最後にもう一度頭に手を置かれ、この話は終わりとばかりに歩を進める飛鳥だった。
「あの、最後に、無神経だとは思うんだけど、どうしていきなり可愛い恰好になったのかなって……」
「ごめんね、まだ内緒」
先を歩いていた飛鳥が振り返り口の前に人差し指を添えて答える。
飛鳥が話したくなるその時まで待つことにしよう。
飛鳥の絵になるポーズを目に焼き付け、学校へと向かった。
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