田舎から都会へきたわけだが

バブみ道日丿宮組

お題:プロの土地 制限時間:15分

田舎から都会へきたわけだが

「やっぱ都会は違うんだねぇ、あっちこっちに高級車いるじゃん」

 幼馴染は東京に言葉をこぼした。

「灰色の世界っていうのかね。機械が多い」

「それだとなんか死者の街じゃない? 銀河が大地に見れるとかそういうのじゃない」

 ただのイメージの問題だった。

「でもさ、田舎のほうが凶悪な事件って起きてないじゃん」

 ドラマのサスペンスは基本都会だ。田舎の事件なんてほとんどない。そりゃあの名作となった逆さま人間がでたやつなんかは都会だし、毎週殺人事件に捕まるアニメであっても田舎はある。

 が、都会がほとんどなのは変わらない。

「都会は犯罪者の街ってか」

「人が多いってことは悪い人も多いってことだからね」

 かくいう僕たちもいい人ではない。

「ばれないかな?」

「バレてはいると思うけど、ここにいるってことはわからないだろうね」

 僕たちは駆け落ちしてた。

 名家の生まれの幼馴染の親族は、凡人である僕の一族を認めない。

 何度も何度も名声を勝ち取っても変わらなかった。

 変わらないなら、もう僕たちが変えてくしかない。

 そんな淡い考えで田舎を飛び出した。

「兄さんが味方になってくれてよかったよ」

「そうだね。感謝しかない。住むところまで用意してくれるなんてね」

 働き口はこれから探すことになるけど、紹介もしてくれるらしい。

「お兄さんが家を出てった理由も僕らは理解したわけだしね」

 同じ仲間というわけだ。

 まぁ妹である幼馴染を大事にしてたという話も聞いたから、なんとかあの家から助け出したかったのかもしれない。

 僕は小さい頃からお兄さんにそれなりに信用されてた。そのおかげでこうして二人でいることを許可されたのだった。

「乗り換えはもうちょっと歩いたところにある駅だね」

「駅の近くに駅があるなんてとても新鮮!」

「都会の中の都会は、15本違った場所に行く電車があるみたいだね。いやそれ以上もあるか」

 凄いと幼馴染は笑顔になり、先へと歩いていってしまう。

「迷子になるよ!」

「大丈夫だよ! そしたら見つけてくれるでしょ!」

 知らない土地で特定の人を見つけるようなプロになった覚えはないが……きっと見つけ出すことができるだろう。いや見つけなければ、彼女のパートナーとして失格だ。

 誰にも見つからない存在。そんな存在を見つけるのが僕の役目だ。

「あっちにアイスクリーム屋さんがあるよ?」

「まだ時間があるから食べてく?」

 うんと笑う幼馴染はひまわりのように輝いてた。

 田舎から連れ出してほんと良かったとそう思えてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

田舎から都会へきたわけだが バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る