第2話 認識
昇進の話を受けた時の光景が目の前に広がった。
この瞬間は純粋に嬉しかった。
会社が自分を評価してくれたのだと思い、やる気に満ち溢れていたと思う。
目の前に居る、もう一人の自分の表情でも理解出来る。
ただ今の自分は言いたい、報われない労働環境になるのだから逃げろと…
また光景が変わり、大学卒業間際の就職活動で今の職場を入れた複数の会社からの内定で喜んでいる姿だ。
この時、募集項目で一番収入が良い会社を選んだのだが、金じゃ時間は変えないとこの時は考えても居なかったな。
ただ、若い時分は『時は金なり』との言葉を信じでお金こそが大事な物だと思っていたが確かに色々な物は貨幣が無ければ手に入らないが時間はお金を積んでも得ることは出来ない物だと今だから理解できた。
どんどん過去の光景が目の前に現れて行く。
高校の進路相談、高校入試の選択、中学での転校など、自分が認識している後悔している光景が次々、現れて行く。
走馬燈だと思いたいが、後悔している自身のトラウマに近い光景を何十回も見せられ精神的に参って来た。
一番の後悔は…大好きな幼馴染に告白も告げずに転校したことだ。
告白で振られると傷つくから言わない事が自分を守る術だと思っていたが、想いを告げないことは一生の後悔に繋がって今も初恋を引きずってしまい、新しい恋へ踏み出せないで居た。
自分に自信が無く、周りの目を気にして流されて、劣等感で生きてきた自分。
その為、沢山の選択肢を間違えたし、選択した答えに自信が無く、後悔を生むだけだった。
(俺が一番自信を持っていた時期は何処だろうか…)
両親は勿論、兄弟とも疎遠となり社畜生活で、過去の事ばかりクヨクヨ後悔していた自分。
もしも、次があるのなら…自分に自信を持つ努力をしたい。
最後の光景は…唯一自分の記憶の中にある家族全員が仲良く食事をしている光景だった。
自分と兄貴がおかずを奪い合い、弟と妹にご飯を上げている笑顔の母親、自分と兄貴の光景を見て笑う父親。
この光景を最後にまた、周りから明かりが消え、暗い空間に戻った。
手足の感覚はあるので暗い空間を前へ向かって歩く。
疲れも感じず時間の流れもよく解らずただ前へ進む。
何となく止まってはダメだと思い、少しでも前へ前へ進む。
微かに前に光を感じる。
暗闇に慣れた目だからこそわかる微かな光。
手を伸ばして光に触れようと近づけたら眩い光が自分の居る空間を覆いつくす。
太陽の光よりも眩しい光の目の当たりにして咄嗟に目を閉じた。
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