人生の分岐点~次は自分らしく生きてみる~
黒猫のガラクタ置き場
第1話 過去へ
仕事が終わった時には終電も終わった為、徒歩で夜道を歩くのがほぼ毎日の帰宅風景。
会社から自宅までは徒歩1時間。過去には車を所持していたが中間管理職になり管理監督者扱いになったら残業代や休日出勤での手当てが出なくなった。
その為、自由な時間が無く、車のメンテナンスやタイヤ交換などの手間が億劫になり、いつの間にか車を手放していた。
そんな生活をしていると、仲の良かった友人との連絡が途絶え友人と呼べる人が居なくなっていた。
家族とも仲違いして一人暮らし、趣味も無く、彼女も居ない独身の40代。
夜道を歩く帰宅時間は毎日過去の事を考える。
(どうしてこうなったのか…)
行きつけのコンビニで弁当と酒を購入する時も頭の片隅には過去の決断に対する後悔がある。
(会社の選択が悪かったのか…昇進と言う言葉に浮かれて内容を確認していなかったのが問題だったのか…)
そんな想いに胸が締め付けられ、苦しくなる時は酒を飲む。
歩きながら飲む酒は全てを忘れさせてくれる。
空を見上げると満月が地上を照らしており、いつもより明るく感じた。
明日は休みなこともあり、少し満月を見ながら帰るのも乙だと思い、遠回りをする事にした。
何時も通る道は住宅街なのだが、周囲が広がっている川辺の方へ向かって歩みだした。
朝は4時に起床して出社、夜は0時に退社。休みの前日はいつもネガティブに過去の後悔を考えながら帰宅する事が多いが月見をしながらだと自然の美しさが頭の中を空っぽにしてくれる。
今週はハード過ぎた為か満月を見ながらだった為か、酒の飲むペースト量がいつもより多く、少し体がふらつく。
(やばい、家で飲む分も飲んでしまった)
空っぽになった缶をコンビニ袋の中へ戻した時、頭痛に襲われた。
かなりの激痛に襲われて、頭を抱えながら膝を着く。
(なんだこれ・・・やばい、救急車呼ばないと)
スーツのポケットからスマフォを取り出そうとしたが手が思うように動かない。
音声認識を使おうとしても呂律も回らず、しっかり発音が出来ない。
(誰か助けてくれ)
激痛に襲われながら周囲を見るが車の気配も無く、辺りからは川のせせらぎと虫の声しか聞こえなかった。
(満月に惹かれて遠回りをしなければ良かった…)
後悔と共に目の前が真っ暗になった瞬間、激痛も感じなくなった。
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