第4話 招かれざる客 異世界転生者争奪戦

ーキュゥゥゥゥィー

暗闇の底に、どこからかせっつく様な声が聞こえる

誰・・?何・・?私の頭の中で、静かに光が明滅を繰り返す

そんな痛みを呼び起こす様なけたたましい叫びが、又耳の奥に突き刺さった



ーキュゥゥゥゥィ、キュゥゥゥゥィー  声が空から聞こえる  これは・・・まさか


「うぅ・・ぐっ・・頭痛い・・ここどこ?・・私何してたんだっけ?」

思い出せない・・私はどうしてここに・・名前も無い私なんて、行く当てすらないはずなのに


見ると、私の周囲は何かの塔だったのか、灰になった魔方陣がある・・。

何か強力な魔法でも誰かがかましたのだろうか?壊れた壁から覗き見える空は漆黒の雷が轟き、不気味な体を醸し出している



「上に・・何かあるの?」


私は近くの半壊した螺旋階段を見た

所々破壊されてるが、頑張れば登れなくは無さそうだ

どうせ、行く宛も無かった私だ。こうなりゃヤケだ。

上から微かに伝わる波動・・魔方陣のはずだ

行ってみよう



そうして、足を一歩踏み出した途端、身体はガクガクと痙攣した


「な、何故!?なんで、、こんな・・何が起きたっていうの」


止まらない痙攣のせいで、傍の階段に行く前にコケてしまう。

その時、上空を何かが猛スピードで旋回し、遠い空へ上がっていった


ーキュゥゥゥゥィー


あ、あれは・・うっ!まだ・・頭が・・なんでだろう、何かを思い出せそうなのに、、頭痛が酷い

そうして痛みを堪えながら、今見た何かが飛んだ空を見上げるが、もぅその姿がどこかに消えていった


・・仕方ない。どうせ、こんなボロボロのありさまだ。とりあえず、上へ行こう


そうして、ゆっくりと螺旋階段を上るきるが、登り切った先にも、階段が離れた場所にあるのだが

一部が崩壊していた


「まいったな・・今の私じゃ、飛ぶ事も出来ない・・どこか別の道はないのかな

そういって辺りを見回すのだが、まわりには上る場所も見つからない


「どうしよう・・」

そうして、困り果ててる時だった


遠くで歪な波動の塊が、この塔目掛けて落ちてきたのだ

私は咄嗟のことに、少し尻餅をついてしまう


「キャッ・・もう、危ないなぁ・・一体今度は何っ!?」

私がそう言って、悪態をついた時だった


ーキュゥゥゥゥィ-


どこからかさっきの声が又、わずかに響いた

これは・・もしかして


そうして、声がする方へと耳を立ててみる

間違いない。さっきの声だ

どこだろう?なんだか、少し弱々しい声がする

私はとりあえず、壊れた螺旋階段ではなく、違う回廊に向かって足を速めた 


すると

壊れた瓦礫の山の中から、蒼い光が零れていた

そして、そこからさっきの声が切なそうに響いていた


「そこに誰かいるの・・?怪我・・してるのかな」


私は自分の両手をみやる・・今の私に魔力なんかない そう、誰からも求められやしない汚れた手・・。


ごつごつした岩、不気味に散らばる骨や瓦礫、汚らしい砂

普通なら、手を汚してまで目の前の無力な存在に力を貸す義理も無い


だけど、


「待ってね・・今、助けてあげるからね」



そうして、私は泥だらけに塗れながら、必死に少しずつ、破壊された瓦礫の山を一つずつ手でどかす

やれやれ・・こんなの誰かに見られたら、いい笑いものだわ・・って、なんでこんな真似してるんだっけ私・・


そうして何とか瓦礫をどかしていき、微かに蒼い光が合間から零れ見えた

「もう少しだね・・頑張って」そう言って、瓦礫の中から中を覗き込む



ーキュゥゥゥゥィー


いた!さっきの子だ・・よく見てみると、それは可愛く美しい妖精だった

・・だが、羽の部分や身体のあちこちが傷ついていた


「大丈夫?痛かったよね?・・こんなに傷ついて・・今助けてあげるからね」


手を隙間から伸ばした瞬間


「痛っ・・!・・ん・・大丈夫だよ。私は敵じゃないから」

そういって隙間から手を差し込み、その小さな妖精を優しく手のひらに包み込む


「瓦礫が落ちてきて、びっくりしちゃったんだよね・・もぅ大丈夫だよ」

そう言った時だった



?「あぁら闇に紛れるオイタな子猫ちゃん♡☆乙女の指をそんなに汚して・・ここで何してるのかしらぁん?」



「ぇっ?誰」



?「ピュア☆ピュア♡なのは良いことだけど、そんなに指を汚すなんて乙女のする事じゃぁないわよん☆♡

私がお邪魔なゴミごとお掃除手伝ってあげようかしらぁ?」


?「アタシの超越魔力で・・こんな風に・・ねぇっ!?」

ソイツは道化の様に両手を横にかざした瞬間



すごい爆炎が唸りを上げて、周囲の壁ごと爆発させた


私はとっさの事になす術もなく、空中に放り出された、スローモーションの後に鈍く身体を瓦礫の中に打ち付けた

「ぐはっ!・・・うっ、・・うう・・な、何を・・」



?「あ~~ぁはっはっはっは~~ん♡☆良い娘ね~~無様に吹き飛んで、素敵よ貴女~♣」

?「久々に面白いショー魅せてくれちゃって感激~♡・・・探索中に良い玩具見つけちゃったわー」



「ぐっ!」鈍い痛みが身体を引き裂く・・一体何が・・



?「ここって、長年伝説として語られてた、化け物が住む悪魔の塔っていうじゃな~い?あぁん♡怖い♣貴女がその悪魔ちゃん

だったりして~~」



?「って。こ・と・は~★この塔に爆発があって見に来たんだけど、王子様でもいてくれちゃったりするするするのかしら~~ん♡

キャー☆す・て・き」



「あ、、貴女は一体・・」痛む身体を押さえながら、そのとき初めて「敵」の顔を見た



?「あら・・レディたるもの人に名を聞く前に、自分が名乗りやがらないでどうすんのかしら~無礼な娘ね?これだから女は

やんなっちゃう・・いいわ、名乗ってあげる・・そして光栄に思いながら、思い残すこと無く散りなさい?」


?「ア・タ・シ・はぁん♡混沌が支配する酒池肉林の薔薇・・キラークラウン(殺人王) ジン・ポゴ・ゲイシーィィィ♡死んでも覚えときなさい」


そいつが名乗った瞬間、瓦礫の中の骸達が忽然と姿を現した



ジン「あぁもぅ、いつ見ても、醜い屍だこと、本来アタシの趣味じゃないんだけど、これも逆らえない運命・・」

ジン「ここで何してたかは知らないけど、王の手で死ねる事、光栄に思いなさ~☆い♡」



「くっ・・はっ!」


私は、痛む身体に鞭を打って、寸前で骸骨達の持つ剣から、寸前でかけ声と共に空中に身を躱す

ガキィンという瓦礫を打つ剣の音がまるで、自分の身体に打たれたかの様に響くが、私はすんでのとこで、妖精を胸に抱き止めていた


胸の中で、その蒼く光る妖精は、グルルルと警戒した殺気を放っている


「逃げなきゃっ!」私は、脱兎のごとく走った

幸い、さっきのオネエが、爆発で奥を塞いでた通路の瓦礫も吹き飛ばしていてくれた

なりふり構わず、痛む足の激痛を堪えて奥へ、奥へと逃げる

頼む・・頼むから、どこか道へ続いていて!


そうして痛む足を急かし、奥へ走り続ける

すると、腕の中の妖精は鳴き声を上げ、空中へ傷ついた身体で飛んだ


「何?・・もしかして、この狭い道を通れっていうの?」


迷ってる暇はないので、どうにか身体をすり込ませる

でも、ここで又、さっきの魔法使われたら死んでしまわないかとヒヤヒヤしながら更に奥へ行く



「ここは・・別なルートなのかしら・・よかったもう少しで魔方陣がある場所に行けるかも」


そうして出た場所は、又しても広い空間で、上空にはステンドグラスの天窓が見えていた

だが、そこに蒼い髪をした少年が佇んでいた



?「・・そこのお姉さん?ここは危ないから立ち去るべきだよ・・ここに何の用?」



「・・・あなたは?・・キミこそ子供がこんなとこにいちゃ危ないよ?速く逃げないと」


少年「ハハッ・・ボクが子供に見えてしまうんだね・・まっ、いいけど、ボクは強いし大丈夫・・ところでお姉さん」

少年「もしかして追われてるの?何かあったのかな」



「そうだわ、ごめんなさい。私、どうしてもこの先にある魔方陣へ行かなきゃいけないの」



少年「へぇ・・奇遇だね。僕もだよ・・よかったら一緒にどうだい?・・でも、お姉さんはどうしてそこへ行くの?」



「どうしてって・・・」私は口ごる



少年「ふぅん・・まっ、ボクも何があるか見ておきたいところだけど、なんかボロボロだし、訳ありっぽいね」



少年「まぁ、面白いから良いか。じゃぁ、一緒に行こうよ」



「・・わかったわ。一緒に行こう・・敵じゃないよね?」



少年「なら決まりだね。ぐずぐずせず急いだ方がいいみたいだし・・ところでキミの名は?・・後、ボクの名前はね」


少年は敵かどうかには応えず、急いた様子で呟く


少年がにこやかで、気品を漂わせながら話しかけてる時だった

又しても爆発が鳴り、同時に周囲の地面から骸骨の群れが出てきた


「こ、ここまで来るの!?しつこい奴ら・・キミ下がって」


私は少年を庇う


少年「あっ・・」


なんだろう?一瞬その少年の顔が、愛くるしく、どこか寂しげな表情を浮かべていた

が、闘いの最中気を許すべきじゃなかった


ーシャァッーーー

軽快に何かが滑る音がした ついで


ーガギィィィィィンー

頭の中に凄い衝撃が響く


嘘・・こんなに痛いから、骨が砕けたのかと思うほど衝撃が響いた

頭から、かなり血が出る

「ぐっ!ぅぅぅ、こんなんばっか・・」


少年「姉さん!・・なんていう・・なぜボクを庇ったの・・こんな、・・こんな」


「良いの・・怪我がなかったら良かったわ・・早く逃げて」


そう言い終える間に、別の骸骨達が今度は空中から飛びかかってきた

二人とも呆けていたので、次は躱せそうになかった


ーキュゥゥゥゥィー

歯を食いしばった時だった

私の前に躍り出た妖精が、瞳を尖らせ、叫び声を上げた瞬間、妖精の周囲に真空が巻き起こる


飛びかかった瞬間の骸達は、その真空と周囲に巻き起こる旋風にあっけなく細断され、骨が空へと空虚な音を立てて木霊する

私は、痛みに挫けながら驚くしか無い


「凄い・・こんな力が合ったのね・・アナタ、護ってくれたの?」


ークルルルルー

その声は細く甲高い、今まで聞かなかった鳴き声だ・・まるで嬉しがってる様な鳴き声だ



少年「へぇ・・風の力の妖精か・・キミにこんな力があったとはね・・それに、人に懐かない妖精にキミ、どうやら懐かれてる」

少年「ごめんね、さっきは庇わせてしまって・・有難う、さぁ、先へ行こう」


そういって少年は手を差し伸べた。その手を私は取り、肩を貸して貰い、ゆっくり先へ向かう


少年「キミは一体何者なの?どうして追われてるのかな?」


「私、・・記憶が無いの。気付いたらここで倒れてて、近くには契約魔方陣があったわ・・多分対の・・だから」


少年「それで、この塔の上を目指してる訳か・・普通に考えたら、何かを契約したか、呼び出したか・・

お姉さん、じゃぁ名前もわからないの?」



「えっ・・?あ、えぇっと、それがどういう訳か、ややこしくてごめんね。記憶が無いのは、この塔に来てからで、

後、私、その、名前は・・無いの」



少年「えぇ?それはどういう事だい?って事は、元から名前が無いの?ひょっとして、キミは・・」

言いかけたときだった


「危ないっ!」

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