第172話

「そなたら我が見えるのか?」


「見えますね」


「おお見えるのか」


馬子は嬉しそうな笑顔を見せたが、すくに気を引き締めた表情をした。何かあるのだろうか?いじめはもう起きないだろうし。心配することはもうないんだが。


「そなた特にそこの女子よ。そなたは誘拐される可能性がある。気を付けよ」


誘拐?だがそんなことをするやつはいないはずなんだが。ん?まてよたしか森田と一緒にいた時にやくざにこれで終わると思うなよ的なことを言われていたな。あいつらが動き出すってことか?心のそこではあいつらにいいようにはさせないと思っていた。


「誘拐?大丈夫ですよ。正弘くんがいるので」


いやヤクザを相手取るのは流石に無理だが。鉄砲とか持っているだろうし。普通の人間を相手取る訳じゃないからな。呪術で相手の動きを封じることはできるが二人限定だし。ヤクザ数人で誘拐してくるとは思えない。10以上で襲ってくるだろう。


「不安そうだけど正弘くんなら何とかしてくれるって信じてるからね」


それは本来森田の役目だが、信頼されてらならそれに応えるのが漢だろう。


「任せろ。長濱さんに指一本触れさせない」


自然と言葉が出ていた。これは記憶を思い出す前兆なのだろうか?この時俺は馬子さんが俺の後ろを見ていたことに気づかなかった。


「所で正弘というものよ。そなたは記憶を失っておるが、明日には甦るぞ」


「本当ですか!やったよ正弘くん。、、、、これでやっと正弘くんが振り向いてくれる。あの優しい笑顔を独占できる。織田さんに独占なんてさせないんだから」


何かを決意したような顔をしている。それにしても思い出すか、正直思い出すのは怖い。今のかなええの感情と長濱さんへの感情で板挟みになりそうだからだ。いっそことどっちも選べたらいいんだが。それは人間としてダメだろう。それにあの二人を見ると喧嘩が起こりそうだし。俺を巡ってというのがなんともハーレム気分を味わえるが、それと同時に一人を選べないのはどうなんだという気分になる。


「その記憶を思い出す方法が少し痛みを感じるかも知れないがのう」


痛みってなんだよ。それに馬子さん表情見てる感じ少しじゃないよね?やだよバットとかで頭殴られたりするの。あれは少しどころかかなり痛いからね。未来に震えていると、長濱さんが俺の頭を撫でた。何ゆえ?


「大丈夫だよ。少し痛いだけだからね」


そんな子供が注射を痛がるような感じであやしても俺の恐怖は消えないよ。頭を殴られることは確実にしてくるんだから。当たりどころが悪かったら最悪死ぬぞ。


「お主の最悪のケースはないから安心せい。我の予知能力は確かだからのう」


死ななくても痛いことは否定しないんですね。だがこのまま長濱さんに撫でられるのも悪くない。そしてあの大きな胸に埋まりたい。おっと彼女がいるのにこれは不味いな。今のままだとよこしまな考えが出てしまう。俺は長濱さんからもう大丈夫だと離れると、撫でたりないという表情をしていた。さすがに彼女がいるのに頭を撫でられぱなしっていうのは不味いからな。


「ふむよき夫婦だ」


「いや俺彼女いるんですけど」


「よき夫婦だって私たちやっぱ結婚する運命なんだよ。分かった?そこで見てる織田さん」


かなえがいたのか?馬子さんのことに集中していて霊気に気がつかなかった。だが長濱さんが気づいたってことは俺よりも感受性が高いのだろう。それか何かを警戒していたか。


「驚いたわね。私の隠形術を見破るなんて、あなた陰陽師の子孫かしら?」


「母方の祖母が土御門家なんだー。まぁ術は使えないんだけど、家にそれ関連のものがないからね」


土御門ってあれだよな安倍晴明公の家柄だよな。梨花が言うには徳川の血筋でもあるって言っていたな。だとすると本来この学校ではなく学習院にいてもおかしくないってことだな。よく許可したな親は。


「土御門ね。私は芦屋家の子孫だしやはり合間見れないようね」


これまた名門の家が出てきたな。俺も一応武士の子孫だが、それが霞むほどの家柄だ。俺場違いじゃね?


「ほほほほ、こりゃ面白いのう。ちなみに正弘お主も我の子孫だぞ?」


え?でも蘇我家って滅んだはずじゃ、、、、いや分家がいくつか残っていたな。そのうちのひとつの家ってことか。俺の家は平安時代の家かと思っていたらもっと前からあって、土着するのも早かったってことか。


「これなら家柄的にも問題ないね。きっとお母さんも交際の許可をしてくれるよ」


「なんで付き合う前提なのかしら?記憶が戻っても貴方を選ぶとは限らないんじゃないかしら?」


「我の子孫はよくモテルのう。他にもモテてるらしいしのう」


人の記憶を勝手に見るな。霊力が強ければ人の記憶を見ることも出来るのだ。改竄することも可能らしい。怖いな。人を自由自在に操れるってことだからな。


『我はそんなことしないがのう』


脳に直接話してきやがった。それって神様しか出来ないんじゃ。いやこの人神様扱い受けてるし、同等の力を持っていてもおかしくはないか。とりあえずトイレに行くか。すると馬子さんも着いてきた。


『それで直接話しかけるってことは何か言えないことがあるんですか?』


『さっき事件を起こすやつが殺気だってこっちを見てたぞ。最初は長濱を気絶させてそのままヤるつもりだったらしいが、お主を最初に殺そうと思ったぽいぞ』


長濱さんことが好きなやつか、それで一緒にいた俺を嫉妬して殺そうとしたわけか。だが腑に落ちない、ヤクザなら俺が一人になった時に狙えばいいが、今は狙われてる感じがしない。てことは今ストカーをしてるのは別のやつで長濱さんに好意か恨みをもってるやつか。一人だけ思い浮かんだ。

















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