第166話
長濵さんはこの後予定あるって言って急いで帰っていった。どうやら予備校があるのを忘れていたらしいが、この辺なので走れば間に合うらしい。俺は押し付けられた小説を見つめる。表紙の女の子が俺をイカレテいる笑みで見つめる。長濵さんがどんな影響を受けたのか気になるし、読んでみるか。そしてあとは恋愛小説を探し、いいのがあったのでおすすめされた本と一緒に買う。
後は参考書か、そう思いフランス語コーナに来ると、運良く大学の過去問集を見つけて、それを買う。災難もあったがそれを上回るくらいの幸福もあった。
とりあえず一週間後の修学旅行に向けて準備するか。俺はそう決めるとないものを買い足し、神楽坂から家に帰った。
「ただいまー」
「お兄ちゃんお帰り。それと何で長濵さんの告白断ったみたいだね。ビックリだよ」
「怒ってないのか?かなえを選んだことに」
正直驚いてる。梨花は長濵さんを推してるし、かなえに対してあまりいい感情を抱いてないから問い詰めてくると思ったんだが。思ったよりも普通の顔をしている。
「そりゃ驚いたけど私に彼女を強制する権利はないからね」
これは家族公認ってことでいいのか?そうならすぐにかなえに教えなきゃな。妹に公認されてないことを気にしてたからな。強引すぎたけどあれしかあの状況でだせる手札がなかったのよと言っていたな。あの状況というのは恐らく長濵さんを好きだった記憶喪失前のことだろう。脅さなきゃ好きな人がいたなら付き合えないだろうしな。記憶喪失前の俺はあまりいい感情を持っていなかっただろうが、今の俺はかなえを選んだ。それが結果だ。
「それなら安心だな」
修学旅行が懸案だが。長濵さんがアピールすると言っていたからな。ヤンデレがアピールするとか怖いんだが。さすがに他のやつがいるから部屋に連れ込みはないと思うが。
「だけど長濵さんには協力は惜しまないよ。やっぱり長濵さんが義姉さんがいいからね」
「細川はいいのか?」
「気づいていたの?」
「アピールがすごいからな。特に入院してたとき、後やたら梨花が俺と細川を二人きりにさせようとしてたからな」
鈍感な俺でもさすがにあれは気づく。アピールが露骨だし。梨花はにやにやしてるし。何で長濵さんに乗り換えたんだ?姉でもほしくなったか?
「長濵さんの愛の大きさがすごかったからだよ。お兄ちゃんが長濵さんを遠ざけた時、やたらとお兄ちゃんのことを聞いてくる。どうしたらいいか相談を持ちかけてくるし」
愛が大きいというより重いだと思うがな。日がたつことにヤンデレ化が悪化してるが。あの小説がきっかけだろうな。後で読んでみるか、主人公に同情する。
それからフランス語を誉められたので今度は喋れるようになりたいと思って買ったフランス語会話集を読んだ。やっぱりリエゾンとアンジェヌマンが聴きづらいな。これは慣れるしかないか。
少し勉強したのでマッカンを飲もうと下に降りると、梨花が声優の番組を真剣な目で見ていた。たしか声優の養成所に通ってるって言っていたな。
「勉強熱心だな」
「今の声優はタレントとしての力が必要だからね。どいう時にどいう返しをしたらいいのか学ばないと」
「それだったら他のバラエティでもいいんじゃないか?」
すると梨花は録画してるのか、テレビを一旦消して俺の方を笑顔で見ながら甘いよお兄ちゃんと言った。声優よりも優れたタレントとしての力を持った人は芸能界にもいると思うが。
「お兄ちゃん声優は声優の返しかたがあるんだよ。声優は良くキャラのものまねとかを番組でやらされたり、自分が演じたキャラの声をキャラが言いそうな口調で言ったり他のタレントとは違うんだよ」
ほう、良く勉強してるな。たぶん養成所で言われたんだろうけど、実際に行動に移す奴は少ない。その文研究しようとしている梨花はそれだけ声優になりたいと言うことには本気なんだろう。俺もなぜか養成所に通っているが、そんなことは言われてないから期待をあまりされてないか、本当声の仕事だけを求める事務所の養成所だから言われてないのかもしれない。
「そうか、頑張れよ」
「お兄ちゃんも声優目指してるんでしょ一緒に見ない?」
声優の番組か、確かに俺もタレントのような仕事をしたいと思っていたが、事務所がその路線でいくかどうか。声優は声の仕事が大切だという事務所だし。まぁ見ないでもしテレビに出たときになにも喋れませんでしたは嫌だしな。俺も見るか。
「ああ。いいぞ。何の番組なんだ?」
「自分仕事についてのトークだよ。後は自噴の今やっているキャラクターで質問に返したりかな?」
ずいぶん難易度の高いことをやってるんだな。声優ならそんくらいできないとダメか。なりきることは長濵さんを見て学んだ。小説家兼声優としてバラエティにもでるだろうしバラエティに番組も研究しておくか。
「それじゃつけるね」
すると上坂すみれさんがライブに来たオタクの物真似をしていて吹いた。いや似すぎだろ。どんだけよく観客を見てるんだよ。それだけファン思いってことなんだろうが。梨花も隣で爆笑している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます