副業です♪
第37話
まじっすか・・・。
何回もその言葉が、はしたないと分かっていても、脳裏に浮かんだ。
いつものように執務室。
いつものように、バディ様とクーペ様。
いつものように、テーブルにお茶とお菓子。
いつものように、ソファに座り、横にバディ様。
そこは、納得してないですけどね。
そのテーブルに、書類があり、その隣にペンがある。
「・・・これ・・・本当ですか?」
書類を手に持ち、幾度も確認し、確実なる方に聞いた。
よく出来ました。
まじっすか、とつい出なかった自分を、ちゃんと褒めました。
「はい。真でございます。奇異な事件があり、書き手が後手となってしまいましたが、ご心配いりません。前月の未支払い分は、今月振込をさせて頂きますので御安心を」
クーペ様の言葉にゴクリと生唾を飲んでしまった。
だって、だって、たかが、花係になっただけなのに、給金が月に200万エニー二は跳ね上がりました!!
それも、ノアの件の慰謝料として、追加で1,000万エニー二!!
まじっすか!!
おっしゃああああ!!!
農機具が何台買える??最新機種が、まあ、1台だけど、買えるよ!!お父様、お兄様、心置きなく買ってください!!これは、私からのプレゼントです!!いやある意味、お詫びの品として受け取ってください!!!
まさか死ぬ間際だったとは言えません。
こちら側としては、ざまぁ、で満足した結果な上に、高額な給金が貰えるなんて、問題ありません!!
あれ???ん????
相談係300万エニー二、という欄がある。
相談係??いつ私そんなのになった??
「オデッセイ様、こちらにサインを」
承諾の欄に自分の名前を書くようにクーペ様から勧められた。
「あの、相談係とは?私、そのような大層な役を申しつかった記憶がないのですが?」
この破格の金額からして、重要な役だ。
「何を仰います。花係の時に、色々、と申しました時に、頷かれましたよね」
さあ、とサインをにこやかや微笑みとともにクーペ様が、ここですと指差す。
ちっ。嵌められた。
たが、300万エニー二。
つまり、全部で月に500万エニー二です。それが毎月貰えます!
くうううううう。
金は欲しい。
だが、この人の話し相手。
ちらりと横に座るその方を見ると、いつもの苦虫を噛み潰したような顔だった。
あれ?
つまりは、私のようなものに金を払いたくないと言う事だね。
でも、私としてもこの人関わりたくない。
あれ?
これって、お互いの利害が一致しているよね?
お金というのは、欲を出してしまっては、あとから痛い目を合う。
金は欲しいが仕方ない。
うん。ここは素直に引くべきだね。
「私、花係も、相談係も遠慮させて頂きます」
「オデッセイ、分かっているよな。危ない橋を渡るということは、これだけの金額が発生するんだ。大人しく俺の話し相手になればいいんだ」
ん?
今なんて?
「・・・オデッセイ・・・今何と言った・・・?」
ん??
何故、そんなに怒ったように聞くんですか?
つまりは、聞こえたんでしょう?
でも聞かれたからには答えなければ。
「では、もう一度」
「言わずともいい!!サインをしなさい!!」
なんでよぉ?自分で聞いたくせに・・・。相も変わらず面倒な人だなあ。
「・・・ここですか?」
「はい、そこにお名前をお願い致します」
「・・・はい」
なんか、納得いくようない行かないような複雑な気分で名前を書いた。
いや、
書かされた、だ。
隣に座る人は、今度はなんか嬉しそうだし。
「ところでオデッセイ、支払い先は、オーリュゥン家でいいのか?これでは、自分の取り分というか、持ち金が少なくないか?」
「そうですか?月に3万エニー二あれば十分ですよ。元々オーリュゥン家で私が使えるお金は1万エニー二しか無かったのですが、それに比べれば十分です」
だって、3倍だよ。
これだけあったら、皆で何回も食事に行ける。
「オデッセイ様は、あまり品物を購入しませんが、気に入る品物がないのですか?」
クーペ様が不思議そうに質問した。
週に1度、宝石商、仕立て屋、家具屋、諸々やってくる。そこで自分が欲しいものを注文する事が出来る様になり、家具を頼めば自室を好きなように模様替えが出来る。
宝石商や仕立て屋なら、王宮御用達の品物が手に入り、招待されたパーティーでは、誰よりも艶やかで、煌びやかさを見せつける事が出来る。
ただ、それは破格の値段。
つまり、それだけの金がいる。
最新式の畑耕す農機具が1台買える金額なのに、ドレスを買う馬鹿にはなりたくない。
「単に、無駄にお金を使いたくないだけです。私利私欲で、購入した品物は大事にはしません。私は、長く使える物にお金を使いたいんです」
「・・・オデッセイ、いつドレスを新調した?」
不意にバディ様が、とても優しそうに聞いてきた。
「・・・さあ・・・?ここ何年も新調しておまりせん。と言うよりも、兄様も姉様も新調しておりませんし、必要ありません。傷んでませんので」
私の答えに、お2人ともが、小さく驚かれた。
「オデッセイ様。このような事を質問するのは・・・大変失礼だとは存じておりますが・・・、来月レイ様の誕生パーティーが開かれます。その時のお召し物はどうされますか?」
「どう?とは?自分が持ってきたドレスを、着ます。それが何か?」
当たり前に答えたのに、2人が神妙な顔つきに変わった。
「・・・オデッセイ。レイはキュート様の娘だ。つまりは王女の誕生日となる。それ相応の・・・」
ああ、そう言う事か。
やっと2人の顔つきに納得した。
「残念ながら、私はその程度の家です。身なりも、身のこなしも、皆様が相手をしている上級階級ではありません。でも、それが私です。あ、ほどこしとかは要りませんよ。そんな造りものに私は、きっと馴染めません。だから、古着と言われようと、自分の持っているドレスで十分です。まあ、これも身分相応ですね。・・・そんな、辛そうな顔してないでくだしい・・・。私は、お2人が思っている程、辛いとも、誰かを羨ましんだりしておりません。私は、私ですね」
素直に答えたが、2人は困惑していた。
「せめて、今回の給金で買えばよいのでは無いか?」
「・・・まあ、考えます。あの、そんな事よりもこれにバディ様これに名前書いて貰えません?」
「・・・?」
唐突に私が書類の上に出したから、バディ様が怪訝そうにを私を見た。
だって、私はこれをして欲しくて今日来たのに、お給金の書類が出てきたから、後手になっただけだ。
「何だこれは?」
「しおりです。ここの花を使ってしおりにしたんです。で、この下にバディ様の名前書いて貰えません?」
「いいが、何故だ?」
「友人のお祝いにあげようかと思っています。バディ様は第1王子。中々お目にかかる相手では無いので、それなら、バディ様の名前が入ったしおりなら、特別な品物になるので喜ぶと思いました」
「オデッセイもか?」
「私は、要りませんよ」
あ・・・しまった・・・。
ムッとするバディ様を見て、慌てて首を振った。
「わ、私はお会いしているので十分です」
「分かった」
微妙な顔されたが、書いてくれた。
へっへへ。10枚ゲット。
「ありがとうございます。それと、明日は休暇を頂いているのでここには来ません」
「ああ、聞いている。どこに行くんだ?」
「街を見てみようかと思っています。まだ出たことがないので一緒に来た召使い達と出てみようかと」
「それは宜しいですね。王都の街は大変賑わい、多種多様な物があります」
「大丈夫か?他に護衛はいらないのか?」
何故護衛?
そして何故そんなに心配そうなんですか?
「いりませんよ。そんな大袈裟な」
「・・・オデッセイだからだろが」
どういう意味よ。
「確かに。次は私めが、ご一緒しましょう」
だから、どういう意味よ。
それに、何故クーペ様はそんなに嬉しそうに言うのだろう。
「あの・・・何もありませんから」
「当たり前だ!」
また、そこからノアの事件になり、愚痴愚痴と言われた。
これいつまでも続くのかな・・・。これも話し相手のひとつになってるんだろうか?
はああああ、と心の中でため息をついた。
宮殿奮闘記 さち姫 @tohiyufa
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