第22話拝借しました
「・・・オデッセイ様・・・」
「お嬢様・・・?」
「こいつは・・・」
夕食が終わり、またまた、皆で私の部屋に集まった。
3人がテーブルに置いているものと、私を、何度も見比べ、困惑気味な顔をした。
「ふっふふ。どうよ!!」
ソファで、流石に足を組むことはしないけど気分はそんな感じで、得意気に言った。
「嬢様どうやって・・・盗んできたんだ?」
それを摘みながら不思議そうに、パジェロが聞いた。
「ぬ、盗んだ!!お嬢様、なんて事を!!」
「そんな特技持ってたんですね。凄いです!!」
「いや、持ってないよ。それに人聞き悪いなあ。盗んだって、ちょっと拝借しただけだよ」
「どうやって拝借したんすか?」
興味津々にパジェロが袋を開け、中に入っていた紙とそれを一緒にテーブルに広げた。
「さっき話したでしょ、近づいてきた時、チラッと見えたのよ。だから、右手で押して、左手でちょい、とね」
「それを盗んだっていうんですよ、お嬢様!!」
「もう、ミラージュ大袈裟よ。明日には落ちてましたよ、と落とし物係に渡すから大丈夫」
ああ、とミラージュは頭を抱えてしまった。
「何で花の種なんでしょうね」
アイが聞いた。
拝借したのは黒い小さい袋だった。
その中に、小さい紙にアマリリスと書かれ、小さい種が100粒くらい入っていた。
普通花は球根で買う。わざわざ種では買わない。
確かアマリリスといったら、大きい花だ。
と言うよりも、こんなのを何故コソコソと受け取っていたのか不思議だ。
「花園で話している感じでは、花が好きなんだと思う。でもそれなら普通に貰えばいいのに、隠れてこんなことするって事は、凄い種なんじゃない?」
「こんなのが?」パジェロ。
「さっぱりわかんないです」アイ。
「早く落とし物に届けに行ってくださいよ!」ミラージュ。
「ちゃんと持っていくから心配しないの。これ、アマリリス、と書いてあるけど、実は怪しい種かもよ」
「薬物とかっすか?」
「可能性はあるかもね。でも、どうやって調べよう」
「普通に考えたら、オーリュウン家に送って調べてもらう、というのでしょうが、数が減ったら気づくんじゃないんすか?」
「こんなにあるけど、数えてるのかな?」
「普通は数えますよ」
「だから、落とし物に届けて終わりにしましょう!」
ミラージュが必死に言ってくる。
不安なのはわかる。
拝借といってるけど、結局は盗んだ。
どう見ても種だけど、私達には何を意味するかさっぱりわからない。
パジェロの言うように数を数えているのなら、取らない方がいいだろう。
ましてや、本当に怪しい種なら余計に、神経質になっているはずだ。
多分今必死に探しているだろう。
「お嬢様、もう少し違う事を考えましょうよ。もっと危なくない方法を」
「オデッセイ様・・・私もミラージュ様に賛成です。なんか・・・訳わかんないもので動くのは、どうしていいのかわかんないです・・・」
正論だ。
下手に右往左往に動くと、私が盗んだとバレてしまう。
盗みは重罪だ。
落ちてたから拾っただけです!
と強く反論すれば誤魔化せるだろう。
だが、とても気になった。
あの妙な動きは普通じゃなかったもの。
「パジェロはどう思う?」
何か思案しているようで、ずっと種を見つめている。
「そうっすね。俺としては、このまま手元におき調べたいですね」
落ち着いた声で言うと、種を袋に戻し、口を閉めた。
「え!?」
「え!?」
2人が嫌そうに驚いた。
「どうやって?」
私に袋を渡した。
「宮殿のまわりの花屋を歩けば」
トントン。
急に扉を叩く音がした。
緊張が走り、皆と顔を見合せた。
「はい」
とりあえず答えた。
「嬢様、それポケットに隠してください」
パジェロの言葉に頷きポケットに入れた。
「オデッセイ様」
この声、と思っている間に、扉が開いた。
ありえない。
私がどうぞ、と答えてないにも関わらず扉を開けるなんて常識では、ありえない。
「おや、これはなんの蜜事ですか?」
クーペ様が、射抜くような瞳でにこやかに見回した。
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