第32話反撃です
「はっ!馬鹿な!お前誰の名前を言っているか分かっているのか!?」
声が明らかに動揺し、部屋にざわめきの声が出だした。
これまでは、楽しそうに見ていた空気が一点、不穏な不安が部屋を覆った。
そうでしょうね。上がったばかりの一介の召使いで、足元で足掻くだけの貧乏な子爵の娘
が、国の頂点の王子と知り合いなんて、微塵も出てこない考えでしょう。
残念ね。これが深窓令嬢なら、優しく角のない物言いで、威圧も感じないでしょうが、私は知っている。
私のスイッチが入った、高圧的な言い方を。
このまま、押していく!
さあ反撃よ。
綺麗に艶やかに散っていくわ!
「勿論よ。第1王子バディ様よ!バディ様は私をご存知だった。だから、花係になり、花園であなたとあったのよ!!」
すみません。そういう事にさせてください
「ノア様、いいえ、ノア!金儲けじゃないとよく言うわ。私は見たわ!!デニール侯爵家の没落を!4年前からかなり減収し、あなたの投資の失敗のせいよ!!」
バディ様から見せてもらったデニール侯爵家の状況と、宮殿に婚約と解消を繰り替えしだした時期が一緒。
浅はかな考えはどっちよ!
ここに死ぬのに後悔はないけれど、ただ、パジェロを巻き込んでしまって申し訳ないと思っている。
それだけが悔いが残る
「あなたはね、自分の損失を埋めるために、デニール侯爵家という名前だけを気にし、悪事に手を染めた。金儲けじゃない?よく言うわ!!この種がなかったら、デニール侯爵家は没落!!」
「・・・なっ・・・!」
明らかに狼狽えている。
「残念ね。没落させていた方がましだったわ!この件で、あなたは罪人。爵位剥奪!!あなたの言う低俗貴族さえも、庶民さえも、なれないわ!!」
「馬鹿な!!はったりだ!!」
震える手が私の肩を通して、よく分かった。
青ざめた顔で、奥底に沈めた不安が巨大になり、心を食い尽くし、恐怖になる。
煽ってあげるわ、その不安を。
「はったり?そう思うならそう思えばいいわ。でもね、何の策も何の保険もなくのこのこ来るやつなんかいないわ!残念ね!種を貰っていたのは、このブロッサムの息子!全てが上手くいっていると、これからも上手くいくと思っていたのでしょう。最悪何かあってもその息子に罪を擦り付け、自分は頼まれただけど言えばいい。実際盗んだのはその息子だものね」
「そ、そうだ!!私は運んだだけだ!!その運んだ報酬を貰っただけだ!!」
馬鹿なヤツ。報酬?デニール侯爵家を支えるあの額が、報酬なわけないでしょ。そんな言い訳が通ると思っているの?
「後悔しなさい。己のした事がどれほど愚かだった。そして、私と出会ったことを後悔しなさい!!ここで、あなたは」
そこで言葉をきり、笑ってやった。
「終わりよ」
その言葉と同時に、部屋にいた人達が、逃げるように動き出した。
「待てっ!!店に火をつけろ!こいつを、連れて逃げる!!」
私の腕を掴み立ち上がったところで、扉が開いた。
「さて、どこに逃げる気だ、ノア」
冷静な中に怒りを含んだ低い声。
この声・・・。
また・・・いい所で出てくるな・・・。
そんな事を考えれる自分に、まだ、余裕だな、と思えた。
「こ、これは・・・!・・・バディ・・・様・・・!」
ガクガクと膝が震え、私から腕を離した。
さっさと私は立ち上がり、ノアから離れた。勿論、上衣で胸元隠した。
「店は全て騎士団が囲んだ。逃げれんぞノア!!捕まえろ!!」
「はっ!!」
どこからこんなにと思う程騎士団が部屋に入ってきた。
誰も逆らうこと無く捕まっていた。
この状況で逃げることも、また、逆らうことも得策ではないと誰だってわかる。パジェロを見ると縄を外され騎士の肩を借りながらも立ち上がっていた。
良かった・・・。
「オデッセイ、大丈夫か!?」
バディ様が心配そうに来ると、胸元を見て、驚いていた。
「あいつ!!」
ノアが騎士に捕まり、生気のない顔で下を向いていた。
つかつかと、ノアの近くに行った。
「・・・オデッセイ・・・様?」
騎士の方が不思議そうに私の名を呼び、私の顔を見て驚いていた。
湧き上がる怒りに、委ねることにしました。
だって!!
「こんの・・・!!腐れ外道が!!!」
やり返すって決めたんだもの!!
「・・・っ!!!」
思いっきりノアの腹部を蹴った。
顔を歪めよろめくいたのを騎士が支えた。
「・・・オデ・・・ッセイ・・・」
バディ様のおののく声が背中からした。
「返してあげただけよ、私にした事を!何度でも言うわ、私に手を出した事を後悔しなさい!!それも、豪華な屋敷ではなく牢屋でね!!あんたはこれから、罪人として、庶民よりも酷い生活をするのよ!!あんたの言う特別扱いをあんた自身が手放した!!デニール侯爵家もあんたが没落をさせたのよ!!」
「・・・っ!!!・・・何を・・・、私はデニール侯爵家の嫡男だ!!」
「はっ!!そうね、この今、この時まで存在がする侯爵家!!それが、今、子爵の私に負けたのよ!!」
「もうよせ!!」
ぐい、と肩を掴まれ、前にバディ様が立ちはだかった。
「ノアを連れていけ!!」
「まだよ!!まだ言いたいことがあるわ!!」
ぎゅっとバディ様が私を抱きしめた。
「・・・もう・・・よせ・・・。帰ろう・・・」
全く納得いかない!!
まだ、まだ、言いたいことがあった。もっと罵倒を投げつけたかった。
だって、自分の金儲けの為に勝手にすればいいものを、娯楽の為に、優越感を得るためだけに、私と婚約し、捨てた。
人として許されない!!
なのにバディ様は、私をノアと引き離し無理やり馬車に乗せた。
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