第30話ブロッサムへ

指定された店の前に来た。


ブロッサム。


パジェロが言っていた店だ

「さ、どうぞ、オデッセイ」

にこやかにノア様が私を向か入れてくれた。

バタリと店扉が閉まると同時にカチリと鍵を閉める音がした。

「まだ、ここにいたんですか?もう屋敷に帰られたと思っていました」

微笑みながら言ってあげた。

勿論嫌味だ。

「色々忙しくてね」

少し苛立ち気味に言うと、私の腕を強くつかみ、店の奥へと連れていった。

一昨日2人から貰った手紙に、


 2日後。23時に1人でブロッサムに来なさい。宮殿は問題なく外出出来る。宮殿を出たら迎えを用意している。


 たったそれだけの内容だった。

本当ならバディ様に相談すべきなのは分かっているが、そうすれば大きな動きになり、逃げられる可能性がある。それに公務で出掛けていて今日は泊まりだと頂いた予定に書いてあった。


宮殿の後ろと前に駐在している騎士団は、夜の時間は甘かった。

前の宮殿にいる召使いに会いに行くのですね、とあっさり通りてくれた。

前の宮殿の宿泊客を相手にする事はないと、思っているからかもしれない。

そして、外に出るための見張りは、恐くノア様からお金を貰っているのだろう。難なく宮殿の外に出してくれた。

出て直ぐに、使いの者だと、私に上着を羽織らせた。この服が分からないようにし、私をここまで案内してくれた。


用意周到だこと。


宮殿を出る前は緊張と怖さで足が震えていたが、いざ宮殿を出てしまうと、落ち着いてきた。

後悔はある。

ミラージュの言うように大人しくするべきだ。この件はとても大きすぎて、多分に私の手に余るのは分かっていた。

でも、少しでもやり返した気持ちに揺らぎはない。

後のことはバディ様達がどうにかしてくれるだろう。私は、私の言葉で言い返したいのよ!


お父様、こんなところで死んでしまってごめんなさい。


とりあえず、先に言っておこう。

店はとっくに閉まっている時間で、従業員らしき人もいない。人払いをしているのかもしれない。

店の奥は結構長い廊下で、明かりは少ない。

「その顔だと、私が何をやっているのか分かっているんだな」

静かな廊下で、ノア様の声が妙に響き気持ち悪かった。

「そうですね、爵位の低い家を手玉にとり、卑しい遊びに夢中かと思ってら、実は宮殿に上がる口実に使っていた、ということでしょう?」

「ほお。少しは頭がいいんだな。どこで手に入れたそんな情報」

「簡単なことよ。馬鹿でも分かるわ。そんな事いちいち言わなきゃけない?」

足を止め私を見るがとても苛ついているのがわかった。

掴まれた腕に力が入り、顔がとても怖かった。

「どこで手に入れた、と聞いてる!?」

「聞こえなかった?馬鹿でも分かるわ。毎年同じことをしてるのよ。そんな事も気づかないあんたの方が、バカだわ!」

殴ろうとするように空いた手を上にふりあげた。

殴られると思ったが、ここで顔を背けたら負けて気がして、ノア様を睨みつけた。

一瞬掴んた腕の力が緩んだ。

「・・・まあ、いい。すぐにその減らず口静かになる」

ぐいと腕を引かれ奥の部屋へ連れていかれた。

扉を開け中へ投げこまれるような格好で腕を離され、体制を崩し倒れてしまった。

「嬢様!!」

はっとする。


・・・この声・・・。


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