第28話パジェロからの報告
「丁度良かったな」
バディ様の声に頷いた。
「戻りました」
パジェロが軽く会釈し側に来た。
「報告しろ」
急に威厳ある厳しい声に変わった。
パジェロの顔が少しひきつり、背筋を伸ばした。
ちらりと横顔を見ると確かに怖いです。
「単刀直入に言うと、ブロッサムという花屋ですね」
3店舗の1つだ。
「何故わかった」
「簡単でした。まず、ここで働く花好きに何処が花屋が大きいか聞いたら3箇所教えてくれました。だが、1つはノア様の屋敷と正反対。そんな所には行かないだろうと、残りの店に行きました。両方の店に聞いたら、1つの店が答えてくれました」
「聞いた?どうやって」
「お嬢様から頼まれました。ここに珍しい花があると聞きました、と。そうしたら、7色のかすみ草がある。どうしますか?と返事が返っきました。出来たら4種類くらい欲しいと言ったら、来週なら色々咲く頃なのでまた来てください、と言われ帰ってきました」
「7色のかすみ草か。半年後に出す予定の種だな。何故答えてくれた?」
「向こうはこっちの格好を見て答えてました」
「格好?」
「両方の店を見ていたんですがすぐに分かりました。貴族の家で雇われているにも関わらず、庶民の服装でわざわざ店に入っていく者が、1店舗だけありました」
「偽装か。考えたな。確かに服装が庶民であれば誰も興味はわかない。だが、貴族の遣いであれば、誰もが気になる」
「確信はなかったですが、見た目で判断する何かがあるんだろうなと思い、宮殿の服を脱いで普段の服で行きました」
「面白い推理だな。では、ブロッサムがこの種をノア殿から貰い受け、裏で販売しているのか」
「はい。それともう1つ。ノア様が慌てた顔で入っていかれました」
緊張感がバディ様から感じた。
「決定的だな。で、お前はこれからどう考えている」
「大きな動きは近いのうちにあるでしょう。悠長に考える案件では無いでしょうから。宮殿から盗みを働いているんですから。ブロッサムに置いてある花は全て片付けてるでしょう。とりあえず見張りを置いてください。栽培している場所があるでしょうから」
「わかった。あと、お前の考えでいい。国外に流れている可能性は?」
「ないと思います。この国の珍しい花を持つことに優越感を持ってる貴族に売っているんです。他の国にしたらそんなに興味があるとは思えません。それに、そんな大きなことしたら、どこで足をすくわれるか分からない」
「クーペはどう思う」
「いやはや、ここまできて、私に何を質問されます。この男の情報で十分でしょう。私からの報告と言えば、やはりノア様は昨日から申請をされておりました。勿論グロリアが断ったようです。宮殿で全くお2人は接点がないのですから当然です」
「やはりか」
「はい。早朝グロリアに、愚痴られました。あんなきつい顔のガキが何処がいい。来る前からお転婆ぶりを発揮している馬鹿な娘なのに、バディ様も暇とはいえ、もう少しましな娘を花係すればいいものを、クーペ様もお守りが大変ですな、と」
ん?私の事?
「あいつの言いそうな事だな。お転婆ぶり、か。それは否定はしないな」
むっ。
どういう意味ですか。
「・・・そんな怒った顔をするな。いい意味で言ったんだ。では、ブロッサムには見張りをつけよう。あとは一応ノア殿の方にも見張りをつける。他に報告は?」
「今のところはありません。また、何か思いつたらお知らせします」
「わかった。では、仕事に戻れ」
「はい。では失礼致します」
安堵の顔で、会釈しさっさと部屋を出ていった。
「・・・あの、では私も・・・。もうお話はないかと思いますので・・・」
出会いも、報告も、聞いたのでもういいでしょう。
「あ、ああ・・・、そうだな・・・」
何故か残念そうだが、もう用はないでしょう。
「オデッセイ様、お仕事の花係がまだでございますよ」
クーペ様に言われ思い出した。
「そうでした。では、花をまた探して来ます」
これで、この部屋から出れると立ち上がった。
「いや、花は昨日変えたから水だけでいいのではないか?」
バディ様の言葉にちっと、思いました。
えええ。逃げれないじゃない。
「・・・かしこまりました」
だが、逆らえる訳でもなく、花の水替えをした。
その間にバディ様は執務室の机に移り、書類を見だした。
忙しい人だもの当たり前ですね。
「終わりました。では、私は失礼させていただきます」
ここは、あえて扉の前に立ち、すぐに出れるように言った。
「お待ちなさい。花係の仕事には話し相手も入っています。バディ様、そうでございましょう?」
え!?聞いてないよ、そんな事。
「あ、ああ。そうだ。うん、その通りだ。クーペの言う通りだ。オデッセイ、ソファに座りなさい」
・・・まじですか・・・。
「さ、こちらへ」
にこやかにクーペ様がソファを指した。
しぶしぶ座った。
「あの、花係のお仕事は、他にどのような事があるのですか?」
「色々でございます」
「例えば?」
「色々でございます。そうでございますよね、バディ様」
「ああ、そうだ。色々だ」
何それ。さっぱりわかんないよ。
はあ、とやっとため息をつくことが出来た。
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