第25話視線が痛いです

「聞いたわよ!バディ様の花係になったんですってええ!!」

「こ、声大きいです」

朝食の時間セリカが、もうこれはわざとです、と言わんばかりに大声で言った。

「あ、ごめーん。だってびっくりしちゃんだもの。バディ様の花係なんて初めて聞いたからね」

また大きい声で、それも、左右見ながら言うから、余計にたちが悪い。

ざわめきがとても痛いです。


なんで?いつ?あんなガキが?


等など、あからさまな避難の声が聞こえ、肩身が狭い。

1番人気が無いとはいえ、ほぼここにいる人達は王子を狙っている。

私が1番驚いています、とここで言っても嫌味にしか聞こえないだろう。

学園にいた頃、そんな話をよく聞いたり、見たりしてきた。女って怖いなあ、とつくづく思ったもの。

「なんでぇ、そうなったの?」

「中庭で偶然クーペ様に声をかけられて、御自分が忙しくて出来ないから変わってくれないか?と言われて変わったら、これからもお願いしますと言わたんです」

「棚からぼた餅的な感じですね。で、バディ様とはお会いしたんですか?任命式におられなかったんでしょ?」

「会いました・・・噂通りの怖い顔でした」

「やっぱり!言い方もぞんざいで、何様よ!的な感じだもんね」

「そぉよ。いつも無愛想で、少しくらい笑ったらいいのにぃ」

「いずれは国王になる身ですのに、無愛想はどうかと思いますわ」


???


昨日の感じでは、顔は怖かったが、言い方はとても優しかった。

それに、表情豊かだったような気がするが、余計な事は言わない方がいいだろう。

それにバディ様が私を知っていたかも?とか言ったら、どうなる事か。

もしかしたら、コネで入ったんではないの?とか言われそうだ。

そんなコネがあるんならこんな所に来ずに、優しい婚約者を探している。


わざわざ、こんな面倒な所に来てないよ・・・。


3人はバディ様に興味がないので、目をキラキラさせながら、私の事なのに、自分の事のように自慢げに喋っていた。でも、なんだか、見てて楽しかった。

この人達が同じ班で良かった、と素直に思えた。

これで、王子狙いの人が1人でもいたら、ギスギスするだろう。この、周りのギラギラ目の怖い女性と毎日過ごすとなると、針のむしろだよ。

落ち着かない朝食を終え、勉強のため部屋に戻ると、ミラージュとアイが不安そうに待っていた。

「お嬢様、先程グロリア様が来られ、ノア様がお2人で過ごしたいと書類を提出しているとの事です」

「来たか」

パジェロの読み通りか。

「でも、オデッセイ様は来たばっかりだから、今回は断った、と伝えといてください、と言われました」

「バディ様が裏で手を回したのか、それとも、本当に2人きりというのがまだ早いのかもしれないわね。私は来たばかりで、宮殿で話するとこは無かったもの。それに今回は確か1班がお相手していると聞いた。まあ、いいわ。どちらにしても、断る事になっているのだから」

「でも、昨日のあの2人怖かったですね」

「本当に!よくパジェロはあんなに返せたのか不思議です。私なんな足が震えて倒れそうでした!」

「・・・私もですよ・・・。やっぱり宮殿の人って全然違いますね・・・」

ビクビクする2人を見ながら、私も同感だった。

「パジェロは?」

「基本、男性と女性は別れて動きますので、どうしているのかは分かりません。何時に外出するのも詳細は聞いておりませんので」

「わかったわ。・・・お昼一緒だから、聞けたら聞いとくわ・・・」

既に気が重い。

バディ様との昼食か。でもあの種の事も聞きたいし、出来たらいつお会いしたのか確認したい。貴族としては、大変失礼をした。けど、昨日ずっと考えてけど、覚えがないんだよなあ。

「本当にいつお会いしたんですか?」

「それも、王子様ですよ!?」

「だから、そんな凄い人にあってるなら皆に自慢してるよ。全然覚えないもの」

「その割にはバディ様はお嬢様の事をご存知の様で、少し寂しいお顔でしたね」

「本当に覚えてないんですかあ?隠してません?」

「酷いなあ。王子相手に嘘ついてどうするのよ」

「確かに」

「確かに」

扉を叩く音がした。

さて、勉強ですね


うーんと背伸びした。

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