第19話花係

腹が立った。

悔しいなんて思わない。子爵に生まれてなんの不自由もそして不幸だと思ったことなんかない。


私は今の家族が大好きだもの。


そのためにここに来た。後悔なんかしてない。

後悔してるとしたら、あんな男に頑張ろうとしていた自分だ。


くっそおおお!!


何をしているかしらなけど、絶対見返しやるわ!!

「・・・あの・・・何かされましたか・・・?」

私があまりに怒っている顔をしているから、不安そうにさっきの園丁が声をかけてきた。

「いいえ。断固たる決意が決まった大事なお話でしたよ」

私の返事に不思議そうに首に傾げた。

「さあ、花を選びましょうか」

「はい」

そこからおすすめの花を選んでもらった。

紙に包んでもらい、第2執務室へと向かった。

宮殿の見取り図は覚えてたので迷子にならずにいけたが、扉の前で暫く動けなかった。

何度も腕を上げては下げての繰り返し。

何で私ここに居るんだろう、とか、何で、私なんだろう、とか浮かび、


入りたくない。

関わりたくない。


の繰り返しで、ため息が出た。

「あの、先程出られたので誰も中にはおられませんよ」

私を見かねて、見張りの方が声をかけてきた。

「本当ですか!?」

「はい。少し前に出られました」

にこやかに教えてくれた。

「ありがとうございます!」

お礼を言うと、軽く微笑み定位置に戻って行った。


ナイスです。


扉を叩くと、なんの返事もなかった。

「失礼します」

さっさと扉を開け中に入った。

中は広かった。

奥に大きな本棚があり、ソファにテーブル。一目見て、私の部屋の物とは、質が違うとわかった。

正面に大きな机があり、空の花瓶があった。


あれに入れたらいいのね。


急いで花瓶に水を入れ、花をさし、急いで部屋を出た。


おしっ。終わった。

良かった、誰もいなくて。

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