第8話3人の女性
「可愛いぃ」
「若いですわね」
「それはそうよ、1番若いもの」
スタスタと召使いの服を来た3人が私の周りに集まってきた。
そこで気づいた。
色が違う。
宮殿で召使いが着用していた服は青かった。
でも、この人達、濃い緑色。それも明らに上質だ。少し動くだけでしなやかな光沢と、ゆったりとした重厚感が見てわかった。
区別をつけているんだろう。
「オデッセイ、初めまして。まずはお茶にしよう。もうお菓子はそこに準備してるんだから」
ふふんと得意げに笑いながら私に近づいてきた。
さっきの返事の主だ。
何となく3人の中でこの女性が中心的な感じだと思った。
「セリカったら、もう食べることぉ?」
「まあ、宜しいんじゃないですか。ともかく自己紹介をするべきなんですから、お菓子があった方が話しが弾みますわ」
「だよね、カレンお茶入れてよ」
「ええ。では、皆様座ってください」
「さ、さ、オデッセイ。こっちこっち」
セリカと呼ばれた人に腕を捕まれ、ソファに座らされた。
確かにワゴンには見たことも無い、美味しそうな菓子がたくさん乗っていた。
「オデッセイの横が私ね。前にシルビアとカレンが座ってね」
「勝手に決めないでよ。私だって、オデッセイの横に座りたかったのにぃ」
シルビアと呼ばれた女性が可愛い声で口を尖らせながらも、前に座った。
何がなんだが分からないまま、3人は和気あいあいと喋りながらお茶やお菓子を準備してくれた。
「食べよう、食べよう。ついでに自己紹介いってみよう!」
「自己紹介がついでなのぉ?」
「食い気が先ですものね、セリカは」
「いいじゃん別に。オデッセイも食べてよ」
「・・・はあ・・・」
全然ついていけない。
それでも、とりあえずカップを、手に取った。
「では、歳上ですので私から。初めまして、私は、モッツァレ伯爵家の長女カレンと申します。歳は22歳です。半年前からお仕事をさせて頂いております」
お嬢様という雰囲気のおっとりとした、お人形 さんのような可愛い人だった。金色のウエーブの髪の毛に、大きな赤い瞳がとても似合っていた。
「次は私ね。ガマンベル公爵家の次女、シルビアと言います。歳は21歳。カレンより少しだけ先輩で7か月前からここにいます」
黒髪の真っ直ぐな髪に大きな黒い瞳。可愛い顔立ちで可愛い声。神秘的で不思議な雰囲気の持ち主だ。
「最後は、私だね」
隣に座っているにも関わらず元気な声で手を挙げた。
「マスカレポート侯爵家の三女、セリカよ。同じく21歳。それで、ここの御局様よ。もう2年もいるんだから」
ふふんと得意そうに笑いかけてきた。
銀色の少し巻き毛に、かなり薄い茶色の瞳。まるで絵本に出てくる女神様のような綺麗な人。
3人とも上級貴族の上に、確かに宮殿の召使いに選別されるにふさわしい御令嬢だと、ため息が出た。
3人とも見たことも聞いたこともない人達だった。つまり、私なんかがと言うよりも、私の家なんかが、関わわれるレベルではないということだ。
本物だ。本物の貴族だ。
場違い?ううん。私ってもしかして間違ってここにいる??
カップを持つ手が震える。
「よく言いますわ。殿方を誑かすのが趣味でここにいるんでしょ?」
「酷い言いようね。私の目にかなう殿方がいないのよ」
外見と違ってとてもざっくばらんとした性格みたい。
と言うよりも2年は長いの?
「あれだけ声をかけてもらってるのにぃ?この間の人は?」
「この間?誰だっけ?」
お菓子を手に取りぽいと口に入れた。
「隣のルビィ国の宰相様の嫡男です。宰相様はルビィ国王の弟でしょ。つまり王家の一族になるんですよ」
「ああ、あの人か。パスパス。だって正妻だよ。そんなの面倒よ。私は公妾の座が欲しいのよ。そんな話より、オデッセイの事聞こうよ」
その一言で、皆が一斉に私を見た。
いや・・・私はたいした話などない。今のさらりと言った宰相様の嫡男とか、国王の弟か、そっちの方が気になるし、話の大きさに、動揺している。
「あ、あの・・・私は・・・」
「自己紹介は大丈夫よ。情報は貰ってるから。オーリュウン子爵家の三女で、16歳。化ける顔してるわね」
「ええ。綺麗なお顔ですもの」
「まさか、宮殿で勉強する子が来るとは思わなかったぁ」
「だねえ。皆高等部卒業後に来てるもの。それだけものがあるの。いやあ、楽しみだわ」
「ですわね。最年少ですもの」
「・・・え・・・?」
そんな内容に私は固まった。
最年少?高等部を卒業してから?2年が長い?でも、私は最低4年はいることになる。
まって、ということは私だけが宮殿で学業を学ぶの??
頭の中が何を考えていいのか、分からなくなってきた。
沢山の疑問と、質問が浮かんできたが、答える人は自分しかいないわけで、でも、自分が答えれるわけが無い。
「なんか困ってる顔になったよ」
「セリカが喋りすぎるんだよぉ。オデッセイ全然喋ってないよ」
「本当ですわ。あ、もうこんな時間ですね」
「移動しようか」
「そうね。そろそろ」
と言っていると扉を叩く音がし、食事が運ばれてきた。
「オデッセイ、お昼だよ。行こう」
セリカが、私の冷めたカップを取りテーブルに置き、私の手を握った。
「とりあえず昼食だよ。凄く美味しいから食べようよ。環境が変わって不安だろうけど、私達、仲良くなれそうだから安心して」
「そうですわ。オデッセイ何も口にされてないでしょ?」
「温かいうちに食べよ。ほら、私達が食べないと、召使い達が困るよぉ」
3人はとても優しく私に声を掛けてきた。
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