第5話バディ目線
「全く、早急に動かれたらこんな後手後手にならなくとも良かったものを!初めから私に全てを任せて頂きましたら、下手な小細工をすること無く万全に行きましたのに!」
苛立ち気味に、クーペが言った。
「・・・分かっている。だがまさか」
「言い訳は結構です、バディ様。ハリス伯爵家のノア様が急遽出現しました、とか言い訳を仰るのでしょう?はあ!?という言葉を投げかけさせて頂きます。のほほんと、構えたいた結果がこれでございます。運良く婚約解消されましたが、無駄に1年を費やし、解消と同時に宮殿に召し上がって頂くなど前代未聞でございます!」
「待て!」
クーペの次々とまくし立てる内容もそうだが、目の前で、鋭い眼差しと、鉄仮面のような無表情の顔の圧に耐えられなかった。
「解った!・・・もういい・・・!・・・俺が、油断し過ぎ」
「お言葉ですが、油断ではありません!」
俺の言葉を思い切り遮り、1歩前に出た。
執務室の机は広い。
それなのに、これ程遠い筈なのに、とても威圧感があり、俯きそうになった。
「バディ様の失態でございます!宜しいですか?私にオデッセイ様に対するあれほど滾る想いを、しつけえな、と思うほど、まあ、口には出しませんがね」
いや・・・出しているよ・・・。
「耳にタコが出来るほど仰ってたわりには、尻込みし、その結果他の殿方にさらわれ、結果、愚痴愚痴愚痴愚痴愚痴と聞かされる私の事など微塵も考えてなかったでしょうが、まあ、私は、バディ様の側付きの召使いの1人でございますので、立場的にボヤキを言うのもどうかと思いますので、口を閉ざさせて頂きます」
元々根に持つ性格だとは知っていたが、ここまで来ると、陰険だ。
幼き頃からの自分を知っているだけに、 返す言葉が見つからない。
確かもう60歳になると誰かが言っていたが、微塵も歳を感じず、まだまだ現役なだけに、頭が上がらない。
それに召使いの1人とか言うが、父上や宰相さえも敵にしたくないと、言われているんだ。
口でかなうわけない。
「・・・悪かった・・・。お前がいたから、難なくここまで来た。初めからクーペに頼めば良かった」
「左様でございましょう。もう少し公務以外でも先を読む事をすれば宜しいのです。さて、道中何も問題がなければオデッセイ様は3日後宮殿に到着致します。勤務形態や、どの班になるかなどは、私の方で裏工作させて頂いておりますが詳細をお聞きになりますか?」
裏工作とは不穏な言葉だが、クーペが言うと不思議にしっくりくる。
「いや、いらない。聞いても俺は足でまといなるだけだろうから、まかせる」
「賢明でございます。では、公務に戻りましょうか。こちらに隠し模写されているオデッセイ様の姿絵をいつものようにニヤニヤ笑いながら公務に向かえばはかどると言う男の性を利用するとは、流石第1王子であります」
こいつは・・・。
「勿論年頃の女性にすれば、気色悪いの一言ですが、御心配には及びません。どなたにもバディ様の恋慕をお教えしておりません。こんな愉快なことは1人で楽しむのが1番でございますので」
至極当然と真顔で頷くが、目が本当に楽しそうだった。
「おやどうされました?苦虫を噛み潰したようお顔ですが、何か心配事があればなんなりと相談にのりますよ」
誰のせいだ、誰の。
「・・・性格悪いと言われないか」
「親子ですなあ。その台詞よくロックスター様も仰っておりました」
ほっほほと笑いながら、終わった書類を整理してくれる。
「ですが、ロックスター様は女性に関しては旺盛でしたからね、バディ様のような陰湿さはありませんでしたよ」
酷い言われようだな。
「さて、お茶を淹れましょうか。今日はこれくらいにしておきます」
軽く会釈すると茶を淹れ出した。
どういう意味だ。全く。
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