第4話出立
「寂しくなるわ」幼少時代からの親友ミラ。優しくて泣き虫だ。来た時から泣いてた。
「手紙ちょうだいね」小等部からの親友タフト。元気でいつも励ましてくれる。自分の事のように目をキラキラさせてる。
「宮殿の事詳しく教えてね」小等部からの親友ムーヴ。お喋り大好きのムードメーカー。今日もよく喋ってる。
「こんな朝早く皆ありがとう。勿論手紙も書くね。ただ、中身を確認されるからあまり詳しく書けないかもしれないけど、頑張るね」
自分で言いながら何を頑張って書くのか疑問に可笑しく思った。宮殿の詳細を書くことは、漏洩するとして禁じる、と書いてあったが、少し違った目で書いたら、楽しいかもしれない。
楽しむ事は大事だ。
あれからすぐに承諾の書類を取り寄せ、提出し、あれよあれよと事が進み、たったひと月で、宮殿に上がることになった。
この事は、親しい親戚のみに連絡し、内々だけで御祝いをした。
選ばれたら自慢する!
と思っていたが、家族会議の結果、嫌がらせを危惧して内密にする事にした。
学園の方も、今日先生が生徒に伝える事になっている。
親友の3人さえも、一昨日コソッと教えたくらいだけど、以外な返答を貰った。
私たち以外に教えちゃダメだよ、と、神妙な面持ちで言われた。
詰まるところ考える事は一緒ということか。
そこで、家族に危害が!?とは、思わなかった。
なぜなら、トリセツに書いてあったが、月に一度国から屋敷の状況確認をされるとの事。その際、真偽を問われるような虚偽は許されないし、
何か嫌がせを受けていないかをかくにんしてくれる。
国からも護られるてる、という事だ。
ますますこれは、確実に玉の輿に乗れる!
と、1人でニヤニヤしてしまった。
約束の日の早朝、宮殿から迎えが来ることになり、親友達がしばしの別れの挨拶に来た。
それなのに、宮殿の豪華な馬車に興味津々のようで、寂しいわ、と言いながら、ちらちらとそちらばかりを気にしている。
わかるよ。私も逆の立場だったらそうだもの。
少し感慨深くなっていた。
私の後ろに大好きな家族。
私の前に大好きな親友達。
長期休暇が貰えるには半年を過ぎないと使えない。つまり半年は会えない。
だから、お父様とアコード兄様は泣きそうな顔になってるし、お母様もハンカチで何度も目尻を脱ぐっていた。そんな悲しい顔を初めて見た。
姉様達は、あっけらかんと悔しいわ、と幾度も口に出していたおかげで、気持ちが落ち着いた。
これでこの御友人達がわんわん泣こうものなら、もしかしたら、
やめようかな・・・
と、流石に弱気になったかもしれない。
「オデッセイ様そろそろ宜しいですか?」
宮殿の馬車に乗ってきた、遣いの方が無表情に声をかけてきた。
迎えが来てもう1時間は経つのだから、ある意味よく我慢したと思う。
と言うよりも、いつもの事かもしれない。
「・・・あ・・・そう・・・ですね・・・」
周りを見ながら歯切れ悪く答える私に、馬車の扉が否応なく開けられた。
「既に約束の時間が過ぎております。これ以上遅延しますと、オーリュウン様の資質が問われます。名残惜しいのは汲みますが、ご容赦くださいませ」
痛いところを次々と突いてくる。
資質、つまり国に逆らうなら、オーリュウン家に咎があるかもしれない、とやんわりと釘を刺してきた。
「申し訳ありません。すぐ乗ります」
すかさず答え、振り向いた。
「お父様、お母様、アコード兄様、ゼスト姉様、フリード姉様。しばしのお別れです。私は宮殿で、このオーリュウン家に恥じぬよう務めを果たしてまいります。だから・・・笑ってください」
すっと背筋を伸ばし、貴族の娘として、綺麗に、優雅に、
微笑み、
会釈した。
服の裾をもち、頭を下げたとき、前からも、後ろからも、すすり泣きが聞こえた。
ぎゅっと目をつぶり、振り返った。
「私の大切な友人ミラ、タフト、ムーヴ、貴重な時間を私に費やして頂き、心より感謝致します。・・・笑ってよ・・・。そんなに泣いていたら、せっかくの門出が私も・・・泣いちゃうよ・・・」
ぎゅっと、裾を持つ手に力が入る。
その言葉に、3人は泣きながら笑ってくれた。
我慢した。
笑って、このオーリュウン家を出たかった。
ゆっくりと会釈し、微笑んだ。
「参ります」
私は、馬車に乗った。
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