第13話

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「私の話を聞かせて欲しいって?」

 思わずかなりの険をにじませてしまったが、法子は気にしていない様子で頷いた。

 ねぇ、聞いて。何度そう言われたことだろう。でも、法子が私の話を聞いてくれた記憶はほとんどない。

 私に、なにを聞きたいのか。法子の意図を掴めないでいると「立ち話もなんだからさ」と彼女は駅前の喫茶店を指差した。

「少し座って話そうよ」

 法子と二人でお茶をするなんて癪だったけど、ここで立ち話を続けて知り合いに会うのも面倒だった。

 大きくため息をつく。

「あんたの奢りならいいよ。後、気に食わなかったら帰るから」

「うん、それでいいよ」

 微笑んだ法子が私に背を向けて歩き出す。私はもう一度ため息をつくと、彼女の後を追いかけた。

 禁煙席の、なるべく外からも見え辛い奥の席で法子と向かい合う。

「それで立川さんは、私に何の話をして欲しいの?」

 立川さん、と殊更に強調して言った。情けないけど、これがせめてもの抵抗だ。

なのに、法子の表情をうかがえば、特に変わる様子もなく注文したアイスコーヒーに口を付けている。私の苛立ちなんて気にしてないような態度が歯痒かった。

「私たちが小学校を卒業した日のことを覚えている? いや、受験の結果が出てすぐだったから卒業式より少し前の出来事かな。私と福多さんが喧嘩したあの日のこと」

「もちろん。忘れるわけないじゃない」

 答えながら、おやと思う。さっきは「幸恵ちゃん」と軽々しく呼んでいたのに今は「福多さん」に変わっている。どうやら私の冷たい態度が堪えてないわけじゃないらしい。

 けど、この子がそんなことを気にするだろうか。

「あの日、福多さんが私に言った言葉の意味を教えて欲しいの。福多さんがどんな思いで私にあんなことを言ったのか。その理由を聞かせて欲しいの」

「どうして今更そんなことを……」

「また同じことを言われてしまったの。福多さんが言ったように、あなたはおかしいって」

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