第10話 本意でない残り二人
あれから五分経過。
……………… 先程からの視線はヤツらからだった。既に立候補した二人が、視線で念を送っていたのだ。いや、お前等の参加は利益が出るかもしれんが、俺にはそれがない。超能力者じゃあるまいし凝視されたって動かないぞ、1mmたりともな! 視線でその旨を伝える。お、返信が来た、七咲からだ。え? 『来ないと殺す』? 見なかったことにしよう。
無視
「………………………………」
「ジャンケンししよー」
誰かがドコからか、そう提案した。『賛成ー』と所々で聞こえる。学級長が呼び掛け、全員一致の同意を確認する校則に
息を吸う。
スーーーーーーー
「最初はグー!!」
来た!
その声に便乗し、誰かの掛け声に、声を重ねる。
「ジャンケン!!!」
ぬっ! この速さならアレが使えるか? 神速で思考が巡る。
説明しよう。人間は焦れば焦るほど、追い詰められれば、られるほど、戦闘の
じゃあ選ぶべきはグーだろうか。いや、頭回せ。今回のルールは貧乏くじの負け残り戦、なら安定を取るのが最適解だ。つまりチョキ出しが有利、多数派であれば負けても次があるしな。因みにだが、本気で勝ちに行く場合は後出しを狙うといい。集団戦では結構バレない。
「ポン!!!!」
誰が負けたと思う?
眼を開けると、円陣を組んで気合入れるものの、俺だけが間違ったサインを出しました、そんな構図が出来上がっていた。皆、気合の拳を前に突き出しているのに、一人だけ、空気の読めないビクトリーサインで負けている。
「まじか………………」
ジャンケンほど、平等な不平等はない。まさか、一回戦目でストレート負けするとわ。今回の勝負で判明したことは、クラスの男子が本能に素直である単細胞なことだ。
『ドンまーい』と慰めの言葉が飛んでくる。俺は適当なリアクション芸で返すしかなかった。すると緩い結びつきを持つ何人かが俺を囲い、胴上げした。『紙川ー、ばんざーい』『紙川ー、ばんざーい』。『あぶないから、下ろしてくれ。下ろせって』。
男子は決まった。
カッカッカッカ。
・登場人物D→紙川 涼
女子の方は小競り合いがあり、仲裁と言う形で学級長が引き受けたようだ。流石、学級長の人望はこういうトコからだろうな。
女子も決まった。
カッカッカッカ。
・登場人物B→高峰 美麗
あ、そうだ、確か詩丘さんに台本を依頼したのは学級長だったな。おっと待った、話の行方が不明なったからって、ゴリラになるなよ。俺が懇切丁寧に説明するから一旦落ち着いてくれ。そうだ、それでいい。
確かに初めは司書の作哉さんにシナリオを外注したし、前にそう説明した。だが作哉さんは長年患っていた持病が急に悪化して、現在入院中なのだ。その地点では、配役と骨子しか出来ていなかったので、映画製作が行き詰ったと。
そこで、代打としての詩丘さんである。裏でどんなやり取りがあったか、不透明だが、転校生である彼女が早く学校に馴染めるよう、学級長がクラス行事に引き入れたに違いない。匠な心遣いが劇的である。
ただし、詩丘さんが引き継ぐ際に、一つ条件としてストーリーを一新したいとのことだった。引き入れた張本人の言葉を借りると、『熱意を感じたので思わず』とのこと。某、緑の連絡用アプリの『B組・映画製作委員会』なるコミュニティーからの引用である。んで、作哉さんにわざわざ連絡いれて了承とって、配役そのまま書き直した、てっなわけだな。配役はこれ以上増やせないだろうから、その制限は致し方なし。
それにしても映画製作、
と言ってもハンドカメラで撮影する、チープなものだが。
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