どうする?

更に数日経った。


戦死者は減ったが、怪我人が増えていった。

魔王軍は止めを刺さず、あえて怪我人を増やして、食糧や医薬品を減らす作戦に出たようだ。

無論、回復魔法もあるが、圧倒的に怪我人が多く、手が足りていない状態である。


そこに、連合軍が欲しかった情報が飛び込んできた。それが良い情報とは限らないが………


「よくやった!早く報告を!」


斥候達を労い、報告を急かした。


「はっ!部隊を小分けにして、魔王軍の駐屯地を見つけました。そして、そこでは魔王が兵士達を治癒していました。………け、欠損部分も回復していました」


!?


「魔王みずから兵士達の治癒をのぅ………なるほど、魔王軍の士気が下がらない訳じゃな」


自分の主君が治してくれるなら、下の兵士達は感謝して、死にもの狂いで戦ってくれるだろう。


「それと信じられない事に、治癒できる者は魔王軍にも何人もいるかと思いますが、魔王一人で数百人もの怪我人を治していました。信じられない魔力総量です」


この報告には他の将兵も口を挟んだ。


「そんなバカな!?かすり傷程度ならともかく、欠損部分の治癒など聖女でも数人行えば魔力切れを起こすぞ!」


ざわざわ

ざわざわ


辺りが騒がしくなった。


「…………撤退じゃな」


バースト皇帝の一言で騒ぎが一瞬で静かになった。


「何をおっしゃるのですか!?まだ我々は負けてませんぞ!」

「そうです!まだまだ戦えます!」


将兵は必死に叫ぶが、他の将軍達も気付いていた。


「確かに、まだ余力はあるじゃろう。いや、余力がある内に撤退すべきじゃな」

「どうしてですか!?」


皇帝の代わりに、懐刀の将軍が代わりに話した。


「少しはものを考えてから発言するがいい。若い者達がここまで無能だとは嘆かわしいな」

「なんですと!如何に将軍といえ、侮辱は許しませんぞ!」


「吠えるな。ならば聞こう。ここから先、魔王軍を打ち破る手立てがあるのか?」

「そ、それは…………」


急にしどろもどろになる若い将兵を置いて将軍が話した。


「ふぅ………魔王軍は死にさえしなければ、何度でも戦える。こちらはすぐには復帰できない。欠損部分の治癒できる者も少ない。これでどう勝てというのだ?」


あっ…………


ようやく事態の全容を思い当たり青ざめた。

そこに、別の報告が入ってきた。


「報告致します!海から援軍の船がやってきました!船の数から最後の3万人の援軍かと思われます!」


ここにきて、大幅に遅れていた援軍が到着したという報告だった。





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