真の実力!

亜人や魔族の持っている剣は純ミスリル製である。量産品の鉄の大盾など、バターを切るように両断できるのだ。


「武器の性能が違い過ぎる!クソッ、前列を交代させる!長槍隊を前に!鎧の着てない縫い目を狙え!!!」


大盾の重装歩兵が役に立たないとわかると、大盾部隊を下げて、攻撃重視の槍隊に入れ替えた。敵ながらなかなかの指示と動きであった。


「よし!敵の接近を止めた!今の内に怪我人を下げろ!弓隊!弾幕を強めろ!!!」


流石の亜人と魔族達も、多くの弓矢を浴びて怪我人が増えていった。


「こっちも魔法部隊、弓隊、本当の魔法と弓を見せて上げなさい!」


シオンは側近をそれぞれバラして配置していた。中央前線にはエルフのエルメスを配置していたのだ。最初の斬り結びから、弓矢の弾幕戦になった。


「長弓隊………放てーーーーー!!!!!」


エルメスの弓隊は飛距離のある長弓を使っていた。エルメスの弓矢は前線の歩兵を通り過ぎて、後ろの敵弓隊と魔法部隊を直撃した。


「ぐわっ!!!」

「ごふっ……………」


軽装な弓隊と魔法部隊は被害を拡大させた。


「クソッ!なんて飛距離だ!いったん引けーーーー!!!!!」


初戦は圧倒的に魔王軍の勝利であった。

とはいえ、連合軍の死傷者は半日で1000人に達した。怪我人を入れるその数倍に登った。

一方、魔王軍は50人も死傷者はでなかった。


しかし、10万対2万である。


まだまだ余力があったのは事実だった。

兵を引いたその夜─


「………予想以上の被害じゃな?」

「はい、まさかほとんどの兵士が全身ミスリル製の装備とは……」

「魔王軍はどこから希少なミスリルを手に入れたのでしょうか?」


予想外の装備の差に頭を抱える首脳陣であった。


「明日からは作戦を変更しましょう。ミスリルの剣では大盾部隊は役にたちません。向こうの長弓隊もあります。部隊全体を小分けにして、それぞれ独立させて動かすのはどうでしょうか?無論、後方の本陣から指示を出して全体の流れをみますが」

「うむ、密集陣形では確かに敵の良い的じゃからな。幸い、広い平原の為に10万の軍を展開しても余裕がある。明日はアレも使ってみるかのぅ?」


初戦の敗北を悲観せず、明日の勝利を目指す所は、伊達に将軍の地位まで登り積めてはいないメンバーだった。


こうして、被害を抑えつつ敵を打ち破る為に寝る間を惜しんで会議を続けるのであった。



一方─


「予想より被害が少なくて、敵に大打撃を与えられたね♪」


上機嫌のシオンだったが、レオは不機嫌だった。


「なぁ?どうして今日はエルメスが中央の前線の配置だったんだ?明日は俺を中央に配置してくれよ」


レオは右翼の端に配置されたため、ほとんど戦えなかったので不満が溜まっていた。


「レオはまだダメだよ。敵にこちらの主力を見せるには早すぎる。一気に叩くのではなく、じわじわ時間を掛けて兵力を減らしていくわよ。そして、後戻りできないと気付いた時は──」


シオンは魔王たる邪悪な笑みをするのだった。




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