上陸前の作戦会議
あれから数日経って、ようやく人間達が動いたと報告があった。
そして各国が分散して出港した船が海上で合流した。
「流石は帝国の船が1番大きく、意匠が凄いですな」
「ふっ、戦争では過度な装飾は動きを阻害する悪手ですよ。しかし、帝国の機嫌を取るのは悪くないですな?」
「あのバースト皇帝が乗る船が旗艦となるのですな!あのような巨大な戦艦を建造できるとは、流石は帝国と言った所ですか」
魔大陸へ向かう船の上では、もう戦争に勝った気になった無能な指揮官が、勝った後の権力争いに注力していた。
「ふぅ………これで勝てると思うか?」
大きな旗艦の甲板にて下を見下ろしながら、側にいた帝国の将軍に尋ねた。
「心中お察し致します。皇帝と一緒に、前線を退いたのは失敗でしたな」
バースト皇帝の側にいるのは、同年代のすでに引退した歴戦の将軍であった。
「練度も低すぎるが、どうにか集団戦闘の格好だけはつく程度にはなった。後は物量に任せるしかあるまい。…………これでは女神様も人間を見限る訳じゃな」
「バースト………」
長年の友として名前を呼んだ将軍であったが、グッと飲み込んだ。
「バースト皇帝、あなたは良くやっている。私と一緒に引退した身ではあるが、ここ最近の腐敗を正す姿勢は、後継者に見習わせたいものです」
「ワシがやったことは、諸刃の剣じゃよ。多くの恨みを買ったわい。この遠征でワシを殺そうと言う者が多く乗っておるじゃろう」
「ならば、その不届き者は私が天誅を下しましょう!最後までお供致します」
皇帝は感謝すると言って海を見つめるのだった。皇帝はこの遠征で死ぬつもりでやってきた。自分の死期を悟ったからだ。
ならば、少しでも腐敗を正して逝くつもりであった。
バースト皇帝の誤算は、思っていた以上に皇帝を慕っている者が多く居たことを、後に知ることになるのだった。
何日か経ち、多くの船が合流して大船団となった。
「皇帝、どうなされますか?」
密偵からの報告では、予定の港町に巨大な龍を配置していると連絡が入った。
「将軍はどう思う?」
「はっ!陸上戦闘では何とかなりますが、船の上では龍のブレスを避けれません。他の上陸ポイントに向かうべきかと進言致します」
皇帝はうむ、と髭を触りながら考えをまとめた。
「まず、足の速い船を一隻用意して、魔法で姿を隠しながら接近させる。密偵の報告が本当であれば、上陸ポイントを変更する」
皇帝の提案に、指揮官達は流石だと称賛した。
しかし、皇帝はこのくらいの提案をここにいる者達が出して欲しかったと落胆していた。
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