決戦の前の準備ですよ

シオン魔王の思い付きに、付き合わせられる仲間達は深いため息をついた。


「はぁ~近いうち、人間達との決戦が控えているのに、どうしてまたきついラスダンに入らなきゃいけないんだ?」

「こら、言葉に気を付けなさい。シオンには考えがあるのよ。…………多分」


士気の低い仲間達の中にマイナだけはウキウキしていた。


「あれ?どうしてマイナは嬉しそうなの?」

「よくよく考えてみると、前はダンジョンを制覇するために、魔物の調査と対策をして少しずつダンジョンに潜っておったから、最下層で手に入る素材について、後回しだったのじゃ。最下層では珍しい鉱石があったのは覚えておったから、楽しみなのじゃ」


マイナは目を輝かせて言った。


「あー、確かに先に進むことをメインだったから、手に入る素材のリストは空白のままだったなの!」


意外にメリットがあるとわかると、仲間達の士気が上がった。


「待たせたのぅ。では行くとしよう!」


バハムートがシオンと一緒についてきた。ダンジョンの主であるバハムートが居れば、大抵の魔物は襲ってこないからだ


こうしてシオン達は転移門で、バハムートがいた最下層にたどり着いた。


「よし!メインは鉱石だけど、珍しい素材があったらガンガン、アイテムボックスに収納してね!」

「おっ、それじゃ勝負でもするか?1番珍しい素材を見付けたヤツの勝ちで」

「面白そう♪いいね!やりましょう!」


バハムートが咳払いをして注意した。


「待つのじゃ!危険が無いわけではない。素材採取に夢中で後ろから魔物に襲われるなど無いように、二人1組で行動する事と、余り離れて行動するのを禁じるのじゃ!」


バハムートの言うことはもっともであった。


シオンとリリア

レオとエルメス

マイナとバハムート


このペアになった。


「ちょっと!マイナがズルい!」


バハムートがペアなんて酷くない!?


「これは抽選で決めたじゃろう?四の五の言っておらず始めるぞい!」


こうしてシオン達は、せっせと素材集めに精を出すのであった。


しばらくして──


ぜいぜいっ、と息を切らして戻ってきた。


「はぁはぁ………あ゛ーーーー!!!疲れた~~」

「はぁはぁ、ゴクゴク………はぁー生き返ったぜい」


ポーションを飲みながらやっと一息ついた。


「うむ、お疲れじゃのう?」

「はぁはぁ、やっぱり無理があったわ。鉱石を掘れば、ゴーレムが襲ってくるし………」

「こっちは薬草系を採取しようとすると、植物モンスターだったりと、大変だったぞ」


まぁ、倒した後は大量の素材が手に入るのだからデメリットばかりではないのだが。


「流石に、こちらから手を出せば襲ってくるからのぅ?取り敢えず戻るぞい!」


こうしてシオン達は地上へと戻るのであった。

そして、アイテムボックスから大量の素材を出し合うと、今回1番レアな素材を見付けたのはマイナだった。


「うむ、ちゃんと採取前に何の素材か見極めてから行動しておったからのぅ。しかし、金額的にはシオンの勝ちじゃな」

「やったね♪」


「くっそ!負けたー!」


まだまだお子様な仲間達であった。


「所で、マイナは何を見付けたの?」

「うぬ、オリハルコンの鉱石じゃな」


!?


ほわい?


「それって伝説の剣とかの素材じゃない!」

「そうじゃのう。量的にはここにいるメンバーの鎧兜が作れるほどじゃな?」


マジで?剣だけじゃなく、鎧まできたら無敵じゃん!


「これは、ドワーフでも1番腕の良い人物を探して依頼するとして、シオンはミスリルゴーレムを倒したそうじゃな。鉱石からは少ししか採れぬミスリルも、身体全部がミスリルでできておるゴーレムを倒せば大量に手に入るからのぅ。まぁ、堅くて倒すのに苦労するのじゃが、今のシオンにはボーナス的な相手じゃったな」


腕を組んで評価するバハムートに最後はレオの番になった。


「レオの組は、従来の鉱石以外に薬草系の素材採取が多かったのぅ。エルフのエルメスが目利きしたのじゃろうが、金額的には劣っても、1番の良い素材を採ってきたのぅ」


えっ、何を採ってきたのよ!


「これはエクリサーの素材じゃな。どんな傷や病、呪いを回復させるものじゃ。その他にも上ポーションの素材など、これから戦争で傷付くかも知れない仲間達の為に、採ってきた素材じゃな。素晴らしい心遣いじゃ」


エルメス………あんたって子は!


シオンはバハムートの評価に感動するのであった。







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